♥重い男♥-1
◇
「シャワー、ありがと」
「うん、早く座って座って」
シャワーを借りてサッパリとした所で、小野寺くんのスウェットを借りたあたしは、冷房の効いた部屋に入っていった。
腕も脚も身長差があるので、何度も折ってやっとちょうど良くなる彼のスウェットは、シトラス系の爽やかな柔軟剤の匂いがした。
クッションに座って最初に目に着いたのが、テーブルの上に置かれたティーポット。
ポットの中でダージリンの茶葉がユラユラとジャンピングしていて、その色をだんだん濃く染めて行く。
それをボンヤリ眺めていると、小野寺くんはモノトーンのギンガムチェックのティーコゼーをポットに被せた。
このティーコゼーというカバー、小野寺くんの自作だというから大したものだ。
そして小野寺くんは、紅茶を蒸らしている間に、テーブルの上に置いていたバスケットからスコーンを2つ、白いお皿に乗せてあたしの目の前に置いた。
「今日のスコーンは、大成功なの! すっごく美味しくできたよ!」
大成功だという美味しそうなスコーンは、バスケットにてんこ盛りになっていて、そのままパン屋さんに並べても遜色ないように見えた。
ドライフルーツを練り込んだスコーンや、チョコチップがたっぷり入ったスコーンは、ちゃんと腹割れしていて見た目も食欲を刺激する。
あー、ヤバい。超美味しそう……。
夜中だというのに思わず喉が鳴る。
「里穂ちゃんのために一生懸命作ったから、たくさん食べてね」
小野寺くんはそう言って、飲み頃になった紅茶をカップ2つに注ぎ出す。
手に取ったカップは、取っ手もほんのり温かくて、冷房が効いた部屋にはちょうどいい。
深夜だというのにこんなおもてなし、小野寺くんはあたしなんかよりよっぽど女子力が高かった。