♥重い男♥-8
同時にあたしは、小野寺くんの言葉に雷を打たれたようなショックを受けていた。
……演じてる?
でも小野寺くんはそんなあたしに気付かない。
「里穂ちゃんってさ、今まで付き合った男の子達もイケメンばかりだったみたいだし、きっと華やかな恋愛遍歴の持ち主なんだろうけど、それも里穂ちゃんにしてみれば、“みんなが誰かと付き合ってるから”それに乗っかっただけ、みたいな感じがするんだよ」
饒舌にあたしのことを分析する小野寺くんの姿がだんだん色あせて見えてくる。
絶対、他の人に気付かれないと思っていたあたしの本当の姿を、見破られていたなんて。
というか、自分でも今まで見て見ない振りをしてきた事実。
それは、人を心から愛したことがないってこと。
確かにあたしが今まで付き合ってきた男の子達は、誰もが羨むようなレベルの高い人ばかり。
でも、そんな彼らでもあたしはいつも心のどこかで冷めていた。
小野寺くんの言う通り、表面上はちゃんと恋愛している女を演じて。
そんな上辺だけの軽い交際であたしは充分よかった。
見映えのいい男の子と街を歩いてデートして、時々身体を重ねる。
そして、そんな恋愛トークを友達と繰り広げては優越感に浸る。
あたしにとって男と付き合うってことは、そういうものなんだ。
だから、天野くんみたいに一生懸命な告白ってのは、あたしにとって重過ぎる。
だって、どんなに熱い想いを口にしてくれたってそれはどうせ最初の内だけってわかっているから。
ーー妻には出張って言ってあるから大丈夫だ。
ーー娘ももう大きいし、妻とはもう少しで別れられるから、あと少しだけ待っててくれ。
「……っつ」
突然こめかみの辺りがズキンと痛む。
聞き慣れた低い声。大好きだった声。
でも、もうその声を思い出すだけで頭が痛くなり、吐き気が込み上げてくる。
あたしはこめかみを押さえながら苦々しく眉間にしわを寄せた。
……永遠の愛なんて、誰が信じられるものか。