♥重い男♥-4
「ああ、そんなこともあったねー」
小野寺くんも、その時の気まずさなんて微塵も感じさせない笑顔でこちらを見た。
「せっかく女の子から勇気を出したのに、あれはショックだったなあ」
そう言って頬を膨らませて見せるけど、つられてあたしもクスクス笑ってしまう。
言葉に出せるのは、あたしも小野寺くんももう笑い話の一つとして消化できたから。
「またまたぁ、僕のこと軽い気持ちで狙ってただけでしょ? どうせ、アクセサリー感覚で」
「あはは……」
妙に鋭いのは、小野寺くんの心が女だからだろうか。
肯定も否定もしづらいあたしは、思わず苦笑いになる。
「でも僕はあの一件があったから、逆にいい方向に転がったと思ってるよ?」
そう言ってフローリングに体育座りをした小野寺くんは、そばにあった白いビーズクッションを抱き締めた。
「このイケメン小野寺が、実はオネエだって知ってるのはあたしだけだもんね」
そう、あのあたしのキス未遂事件により、小野寺くんは自分の正体があたしにバレてしまったのだ。
彼がオネエだと知った時は、正直物凄く衝撃を受けた。
だって、すっごく顔が綺麗で、背も高くて、スタイルもよくて、仕事も覚えが早くて、超完璧な小野寺くんが、オネエだったんだから。
内心めちゃくちゃパニックになってたあたしだったけど、その時の小野寺くんはその比じゃないくらい焦ってたらしい。
今でこそ、あたしに本当の姿を見せてくれている彼だけど、あたしに正体がバレたその時の彼の泣きそうな顔は、今でもはっきり覚えている。
怒られるのを怯えて構える子供のような瞳。
小野寺くんがスウィングで、オネエという裏の顔を微塵も見せなかったのは、それが異質な存在であるってことを自覚してたんだと思う。
「気持ち悪い」とか「オカマ」とかそんな風に罵られた事もあったというから、あたしがどんな反応をするのか、怖くてたまらなかったみたい。