♠性悪女♠-2
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「おはようございまーす」
バイトに入る時は、例えその時間が夕方からだったとしても「おはようございます」と挨拶するのがカフェ・スウィングのルール。
リーズナブルにコーヒーを楽しめるうちの店は、他のオシャレカフェみたくフードが凝ってるわけではない。
サンドイッチやホットドッグ、ケーキなどの軽食がメインなので、平日の17時は、普通の飲食店なら混み出す時間帯なのだが、うちの店は緩いアイドルタイムになる。
そんな中、制服に着替えた俺は仕事に入る。
その足取りは重く、まるで足枷を付けられた囚人のよう。
ああ、かなり気まずい……。
「おはよう」
まず最初に挨拶してくれたのは、カウンターの入り口脇で明日のサンドイッチの仕込みをしている本日の責任者・古川小夜さん。
うちのバイトの女の子が細い娘が多いせいか、ぽっちゃりキャラで売ってる古川さんだけど、一般的には全然普通体型だ。
うちのバイトは、可愛い女の子が多いから、古川さんは劣等感を感じてるようなんだが、いやいやどうして彼女も実は結構可愛い。
いつもニコニコしているし、とっても優しいし、仕事も頼れるお姉さんって感じで、密かに俺の癒し系。
そんな古川さんには当然彼氏がいるんだけど、これがまたいいオトコなんだ。
彼女が遅番の時は、大抵彼氏のお迎えがあって、いつも仲良く帰って行く。
古川さん曰く、「保護者の気持ちになってるんだよ」らしいけど。
いやいや、ハタから見れば、古川さんを一人で帰らせたくないのが丸わかりなほど、彼氏の好き好き光線をすごく感じる。
そんなイケメンの心をガッチリ掴む古川さんだから、心身ともにいいオンナなんだろう。
こういう女の子を好きになってれば、幸せになれたのに俺ときたら……。
チラリとフロアに目をやれば、松本がテキパキと食器返却口でトレーやらカップやらを手際よくまとめている。
そして片付けをしている最中でも、お客さんが食器を下げようとすると、素早くそれを受け取って極上スマイルで頭を下げる。
遠目からでもハッキリ見える松本の笑顔は、悔しいけれど、やっぱりスゲー可愛い。
でも、俺はあの笑顔に騙されていたんだ。