雨の訪問者-6
「行くよ。最後の仕上げだ。」
俺は文香から体を放し、見下ろしながらゆっくりと一枚ずつ着ているものを脱いでいった。
ボサボサの髪、疲れ切った表情、大きく肩を揺らす荒い息…。美しく無邪気な文香にはとうてい似つかわしくない。
いつも屈託なく笑い、可憐で清楚ではにかんで、空を見上げてふっ、とため息をついていた文香。しかし、彼女は今、夫を裏切り、カラダの快楽に溺れた下品な全裸を晒し、捨てられた日本人形のように惨めに横たわっている。
俺は、慎重に文香の上に体を重ねた。
先端と入口が触れ合った時、彼女が微笑みかけてきたような気がした。
埋まっていく。文香の中に。埋められていく。俺が。
少し離れたところで、メロウなヴォーカルを聴かせていたターンテーブルの針が、ジジ、ジジ、と単調に繰り返されるノイズを流し続けていた。