狂愛者の最後-1
無限に広がるオレンジ色の雲にカラスたちが鳴き声を出し、それぞれの巣にでも帰ろうとスイスイと優雅に天空を飛び立つ。
学校や職場を終え、これから家…はたまたゲームセンターやカラオケ居酒屋にでも行こうかという人々を目にする。
風馬君といつもの通り肩を並べそんな光景を眺める中ではとても深刻な悩みいや問題を抱えているとは思えないくらいだ。
「佐伯君、まだそんな事を…。」
彼、佐伯君は絶えずしつこく私の同情を誘おうと変な嘘メールばかり寄こしてくるのだ。
「件名、助けてくれっ!本文、親父の奴暴走族と喧嘩して入院してそれで相手の暴走族に大怪我追わせて、俺、もうどうしたら…。」
それを見て後日様子を悪魔で軽く見に足を運んだら、当然ピンピンしていた、暴走族はおろか自転車で最近新しい奥さんと趣味のサイクリングを楽しんでるらしく、入院も何もたまに血圧の薬を受け取るくらいで。
「件名、助けてくれっ!本文、親父の奴今度は麻薬に手を出して、シャバを沢山受け取るって張り切って、俺の言う事なんか聞かないし、新しい奥さんも参ってて、だから俺、もうどうしたら…。」
件名くらい変えろって、同じ単語使って。
「…それで、実際には?」
「うん、麻薬何か当然手を出してないし、薬何て市販の普通の薬を飲んでるだけで、シャバったって、こないだ三人でしゃぶしゃぶしてくらいで…。」
「…ぷぷ。」
「駄目よ、笑っちゃー。」
「…、でも君だって。」
深刻な問題な筈なのにお互い笑いを堪えようとして。
「でも我慢合戦だから、何来たって僕らの愛は変わらない。」
「うふふ、こんな嘘メール何かで心動くかってね。」
しつこいにはしつこいけどその行為がこの程度だと知り、そんなに不安や恐怖はない。
近くで見る頼もしく優しい彼の笑顔、それを見て私はすっかり安心し油断していた。
「えっ!!何よコレっ!?」
風馬君におすそ分けしたい果物を渡そうと家まで来てもらっているとそこで母の悲鳴が響き渡る。