狂愛者の最後-3
「で?なぁーんで私の所に来る訳?」
「稲葉さん…。」
翌日、体育館裏に彼女を呼び出した。
その顔はいかにも全てを知っているかの如く魔女のように不気味な笑みを浮かべ。
「私のお店を荒らしたの貴女でしょうっ!?」
「…はっ?急に何を言い出すの?」
「とぼけないで!あんなメッセージ残すの、貴女以外にありえない!」
返して。
店のスプレーに殴り書きされた言葉だ。
「私だってバカじゃないの、この状況なら誰がどんな目的でやったかすぐに分るの。」
「……ちっ。」
あっけなくバレて面白くないようでバツ悪く舌打ちする。
「あーあ、全く変に賢いんだから嫌になっちゃう、折角アイツにアンタらの情報提供してやったってのに。」
「え……、まさかこの前彼が私と風馬君のデートの場所が分かったのって。」
「ふっ…。」
ふてぶてしい笑みを浮かべる。
「もういい加減にして!私達にならともかくお母さんを関係ない人を巻き込まないで!」
「だったらぁ!……分かるでしょ?」
「っ!!」
さっきまでにやにやしてたクセに今度は暗い顔で私に言い聞かせてくる。
「…卑怯者、渡さないよ!貴女の思い通りに何かさせないし、彼も同じ気持ちだから。」
「へぇーだったら。」
「だったら、何?今度また何かやってみなさい!次はいくら何でもおしまいよ!昨日の行為だけでも器物破損罪は確定よ!バレずに慎重にやろうたって無駄だから。」
佐伯君の地味な同情作戦と、稲葉さんの犯罪スレスレの凶悪行為何かに。
「わっ、私は…。」
もはや戦争だな。
「だって、風馬君は元々。」
「私の物になる筈だった、それなのに柊さん達が裏切った…、その件はもうずっと前に言ったよね?そして誠心誠意謝ったよね?」
「そんな事ではいそうですかって!」
「最初は仕方がないってだから嫌がらせを受けても…そう思ったけどここまでくると、もう駄目だよ。」
「私は、私は!……。」
涙目になって、同情したい気持ちと早く観念して欲しい気持ちがぶつかる。
「もうここまでだ、稲葉さん。」
「!」
後から来ると言って約束通り来てくれた。
「あ、あのね…昨日の事は本当に御免なさい。」
「…信じない、あんな事して。」
「本当よっ!いや、確かに脅して懲らしめてやろうとは思ったけどあそこまで。」
「……、ずっと前に伊吹さんを襲った時同様例の悪友どもかい?」
「うん、でもねあそこまでする何て思わなかったの!…ただスプレーで落書きしてやれって…、それなのに物荒らしてお金まで盗む何て。」
「もう信用出来ないよ、僕の大切な人達をここまで傷つけて!」
「っ!」
「もはやその涙も嘘泣きに見えて仕方がない。」
「本当よっ!信じて!」
必死に訴える彼女、でもそんなものもはや誰にも伝わらず。
「稲葉、明日香さんだね…。」
「っ!?」
突然警察が自分の元へきて驚く彼女、その後ろで仲間の警官が彼女の悪友である窃盗犯であるガラの悪い不良少年三人を拘束している。
「これは…。」
目を丸くし、激しく動揺する稲葉さん。
「器物損害、そして窃盗の罪で店を元に戻した後すぎに警察で被害届を出した。」
「そんな、私は。」
「もういい、もうどこか行って。」
この期に及んでもう相手にする気もない、無論同情もしない。
警官たちに連行されつつも彼の名を喉が枯れるまで呼び続ける稲葉さん。
「稲葉、さん……。」