淫ら華-10
しばらく歩くと、ペットショップの入口が目に入った。
「エリカ、見えたよ。あの中に入ったら、もう、戻れないぞ、エリカ。いいね?」
「あっ、はい、楽しみにしてます。あの、首輪なんですけど、普段からつけられるのが、欲しいんですけど。」
(ばかっ、相手の思う壺よ。けど、わたしは、望んでた、子供のころから。いけん、、変態よ、、、)
エリカの中で、自分自身が子供の頃から封じてきた望み、その望みがいまかなおうとしていたが、同時にその望みを隠すために演じてきたSのキャラクターが、今は、エリカ自身の性格になり、封じ込められた本来のエリカと主導権を争い、彼女を身動き取れなくしていた。
「普段から着けられるものなら、あそこのコーナーかな?」
えっと、驚くひまもなくエリカは、ワタルに首輪のコーナーに連れていかれた。
エリカの目の前にキラキラと輝くような素材と鮮やかな色とさまざまな素材を組み合わせた、色鮮やかな首輪が飾られていた。
「これってホントに首輪なんですか?綺麗!」
魅入られたように、首輪に見とれる彼女にワタルは、
「あぁ、お洒落なタイプが増えてるからねぇ。エリカには、この辺りかな?」
そう言いながら、ワタルが布地の表面に樹脂コーティングを施し、白地に赤、青、黒の三色を配した、わりとお洒落な首輪だった。
エリカの首に合わせると、色白の肌を引き立てるように、細い首に首輪が煌めいていた。
「あの、この、キラキラしたのは?」
「うん、スワロフスキーだね。綺麗だ、鏡を見てご覧エリカ、良く似合ってるよ。」
あっと、エリカが叫んだが、鏡に映る自分を見て、彼女の顔に微笑みが広がった。
(これが、私?綺麗、首輪似合ってるわ。嬉しい!ばかっ、これじゃ変態じゃない!そう、でも私は、これが好き、、)
「そう、これが君さエリカ。綺麗だよ。これから、もっと、お前は綺麗になるんだ。さあ、会計をすまさなきゃな。」
エリカの心を読んだように、ワタルが言うと、
「ご主人様、嬉しい。私のために、、、。」
エリカの中にさまざまな感情が混じり合い、そして、自分の押さえ付け、隠し続けてきた本当の自分を解放できる喜びに浸っていた。
同時に普段のSの仮面が彼女自身をせせら笑っているように感じていた。