さいかいはさいかいはつビルで-4
「おまえ、初めてにしては上手やね。いつでも父親になれるよ。」
僕は真っ裸の動きのついでに、みんとのウチのバスルームに入ってしまった。
そして、ゆう子チャンのようなちっちゃい子の、身体を洗うわざを教えられてしまった。
こんなにちっちゃなゆう子チャンのこんなに柔かい肌のむこうに「女のすべて」が包まれてる……
そうかも知れないけど、信じられない。
「おやおや。」みんとがバスタブの中から、ゆう子チャンの顔をのぞきこんだ。
「好きな人に身体洗ってもろて、嬉しい顔しとるわ。」
「え?」僕はみんとの顔を見た。「好きな人言うて誰?」
「おまえやん。」
「……ゆう子チャンが……どういうこと?」
「さっき本屋さんで、本を立ち読みしとったら、抱っこしとるゆう子チャンが、『私、あの人好き。あの人好き。』って何べんも私に伝えて来るねん。誰の事やと思たらおまえが立っとってん。えらい焦ったで。」
「何で焦るねん。」
「そりゃそうやろ。我が妹が おまえに目をとめたんやで。」
みんとが手を伸ばして、ゆう子チャンの髪をなでながら言った。
「でも、ゆう子チャンがおまえを好きなのは ホンマモンやな。……ゆう子チャン、私が抱っこしても安心して眠るようなことないもん。」
僕は、みんとの言葉を思い出していた。
ゆう子チャンの このちっちゃいちっちゃい身体の中に、女のすべてがもう備わってるんだ。
【ここまで】