『茜色の空に』-1
「かんぱ〜いっ!」
皆口々に、「久し振り〜」「遠くからご苦労さん」などと言い合ってグラスをぶつける。
私、村上明香も、隣や前に座る大学時代の友人とグラスを傾ける。
「結構集まったな。」
隣に座る、同期生の男の子が話し掛ける。
「ほんと。」
目の前のつまみをつつきながら返事する。
私の通った大学は、全国的にもそう多くない学科があった為、他府県から下宿をして通う学生が多かった。私も例外ではなかった。
今日は、同じ学科の卒業生が久し振りに、学生時代よく入り浸っていた居酒屋に集まったのだった。
「みんな変わんないねー。」
「うんうん。相変わらず。」
近況報告や昔話を、左隣に座る同期で仲の良かった女の子、竹下みのりと話していると、
「明香センパイは綺麗になったね。」
前から突然、2コ後輩にあたるしんちゃんこと佐藤秦一が話に加わる。うちの学科はこじんまりとした少人数だった為、先輩や後輩とも仲が良かった。
今日も、誰とはなしに、同期だけではなく、先輩や後輩も誘った様だ。
「へ?」
この子、そんな事平気な顔して言うコだったっけ?
学生時代の印象は、綺麗な顔立ちに似合わず、どちらかと言うと真面目で、そんな軽口を叩く様な男の子ではなかった。様な・・。
「しんちゃん酔ってるぅ?」
みのりが茶々入れる。どーゆーイミ?
「いやいやマジで。」
「ありがとね。まー飲めっ。」
ちょっと照れ臭かったのを隠す様に、ピッチに入ったビールをしんちゃんに勧める。
そこからは皆んな、学生時代に負けない位のどんちゃん騒ぎ。
懐かしく、暖かい人達との再会に、そして目の前の、すっかり男性らしくなって、ニコニコ微笑んでいるしんちゃんに少しドキドキしまがら、私もすっかりほろ酔いになってしまった。
「あーもう電車最終来ちゃうよー。電車組〜!解散するよー!」
しっかり者のみのりが号令をかける。
「えーもうそんなー?」「またね〜。」
名残惜しそうに散って行く面々。
私も、市街地の繁華街にある安いホテルを取っていた為、電車で戻らなくてはならなかった。
「みのりは?」
「あー私はカレシん家っ。迎えに来てもらうから。じゃーねー。又皆んなで飲もうね〜。」
手をヒラヒラさせて去って行く。
「明香さん、ホテルどこ?」
又突然、しんちゃんが私に話し掛ける。
「え?○○ってトコ。しんちゃんはどことったの?」
そう、しんちゃんも他県から通っていた学生の一人だった。この春卒業して、地元に戻って就職したらしい。地元は私と隣の県だ。