『茜色の空に』-3
「他に好きな人が出来たみたい。」
「・・・。ごめん。嫌な事聞いて。」
「え、別に?もうずっと前の話だし。もう全然ヘイキ。」
本当にそうだった。彼の事を全く思い出さない、というわけではないが、今では良い思い出だったと思える。
彼と別れてから、他に付き合ったりする人も居なかったが、特に彼に固執していたわけではなく、ただ単に女ばかりの職場で、出会いがなかったから、とかその程度の理由だ。
「今は?彼氏、いないの?」
私が本心で言っていると分かったのか、ホッとした表情で聞いてくる。
「しんちゃんは?彼女出来た?」
私の事ばかり聞かれて何となく落ち着かなかったので、はぐらかす。
「・・・。いないよ。」
「えー。もったいないねー。しんちゃん、可愛いのにー。」
「・・っ。」
ボッと、しんちゃんの顔が耳まで赤くなる。
しんちゃんは大学の時はずっと彼女はいなかった。と思う。私が卒業してからはよく分からないが。
見た目は全然良い方だし、性格も優しくって申し分ない男の子だったけど、
真面目で、男の子とつるんでばかりいた為だろう。
「その内良いコが見付けてくれるよ。」
慰めではなく、心からそう思って口に出した。きっと素敵な女の子が見つかる。
するとしんちゃんは、何故か少し淋しそうに笑って、
「そうかな。」
と、ポツリと呟いた。
「うんうん。保証する。」
昔はこんな色恋話をする事なんてなかったので、少し気恥ずかしくなり、明るく答える。
「僕がさ、なんで彼女いないか、知ってる?」
「え?」
なんで、って。こっちが聞きたい。だってしんちゃんは本当にイイ子で・・。
え。まさか女の子には興味ナイとか??そっち!?
と、頭の中で色々考えてると。
「僕、入学した時から、・・明香さんの事、好きだったんだよ。」
「・・・・・・・。え?」
「明香さん、その時から彼氏いて、他の男の事、アウトオブ眼中だったでしょ。」
確かに。その頃はもうラブラブだったかも。てゆうか、えええーーーっ!!
しんちゃんが、私を!?頭がパニックだ。
「彼氏いても、ずっと好きだった。年上なのに、何かちっちゃくって可愛くって、好きだったよ。」
「・・・・。」
言葉が出ない。
「てゆうか、今も好き。」
ボッ。今度は私が赤くなる番だ。真剣な目で見つめられて、動けなくなってしまう。
「キス、していい?」
揺らめく瞳で顔を近付けてくる。ああ。こんなカッコ良かったっけ?何だかクラクラしちゃう。
黙って顔を赤くしていると、
「彼女出来るって、保証してくれるんでしょ?責任、取ってよね。」
微笑みながら、そのまま顔を近づけて、唇を優しく合わせる。