『茜色の空に』-2
「僕?僕は××だよ。近いし、送るよ。」
「ほんと?有難う。」
素直に受ける。そうゆう優しい所は変わってない。
数人と同じ方向の電車に乗り、終点で降りた所で別れを告げる。
「行こーか。」
私が振り返ってしんちゃんにそう言うと、しんちゃんはじっと私を見つめている。
・・様にみえた。
「ん?」
「いや。何でもないよ。相変わらず明香さん、お酒強いねー。」
「そー?皆んなと飲むとねー。楽しくって。ついね。」
背が高く、細身のしんちゃんを、背の高い方ではない私が見上げる。
「・・・。ね、センパイ?飲み直さない?」
何となく改まった口調にドキッとする。学生の時は、二人きりでどこかへ行くなんて事は無かった。そもそも学生時代の私は付き合いが悪く、学科の連中の誘いに乗る事はあまりなかった。
たまにあっても、みのりと3人だったり、大勢で飲んだり、その位だ。
「んー。いいけど。どこで?この辺、うちらが居た頃と全然違うくってさー、さっぱり分かんないんだけど。」
「僕もこの辺じゃ飲まないし。じゃあさ、コンビニで何か買って僕んトコのホテルで飲もうよ。ホテルの下にコンビニあったし。」
え??しんちゃんの泊まるホテルっ??そんな事、よくさらっと言える事!
てゆうか、私の考え過ぎかしら!?
一人でドギマギしていると、
「駄目?」
と、頭を私の顔の位置まで下ろして覗き込んでくる。
う。駄目じゃないけど・・。
「フロントで見付かったら何か言われない?」
「あー、まー大丈夫っしょ。センパイ小さいし。見えない見えない。」
「ひっど〜。」
結局、そうやって二人でじゃれ合いながら、コンビニで缶ビールやら、つまみやらを適当に買ってホテルに入った。
「お邪魔しま〜す。」
「どうぞ。って別に僕ん家じゃないけど。」
ホテルは、ビジネスホテルといった感じで、そう広くもなく、ベッドと、小さいテーブル、
それからソファが一つあるだけのシンプルな造りだった。
私はソファに腰掛け、しんちゃんはベッドに座る。
「じゃ、あらためて。かんぱーい。」
「かんぱ〜い。」
二人で缶ビールを傾ける。
それから私達は、先程の居酒屋では話さなかったお互いの近況を語り合った。仕事がどうとか、お互いの地元がどうとか。
そうして、二人で缶ビールを2~3本空けたところで、しんちゃんが、ふと、
「そういやさ、明香さん、彼氏は?」
と、聞いてきた。
「え。とっくに別れたよ。私が卒業するかしないか位に。知らなかった?」
「うん。全然。そうなんだー。仲良かったのに。なんで?」
そう、私には大学時代、ほぼ丸々4年間、違う学部に付き合っていた人がいた。
友達との付き合いが悪かったのはそのせいだ。いつもその人と一緒に居たから。