前章(四)〜惜別T〜-36
(とっ始めが肝心だと云うからな。成る可く、痛みを伴わぬ様に……。)
何事も、初めての体験が酷い物だと心に傷が残り、長きに渡って差し響いてしまう。そう忖度した伝一郎は、普段より念入りに時間を掛ける事にした。
「で、伝一郎……様。」
すると夕子が、快楽に身悶えさせ乍らも、伝一郎に云った。
「もう……して下さいな。」
散々、焦らされ続けた為に痺れを切らし、到頭、少女自ら挿入を懇願したので有る。
「此れでは……慰み者も同じです。さあ、早く。」
「ああ、判った。」
伝一郎は、夕子の股に手を掛け、布団に押し付ける程に広げた──。先だって学友達との談笑の中で、「未通女と目交わう時には、脚を大きく広げてやる事が肝要だ。」と、聞き及んでいた。
股を広げてやる事で花門も広がり、円滑に挿入出来るらしいので、伝一郎は試してみる事にした。
摩羅は痛い程に勃っている。伝一郎は手を添え、夕子の花門に当てがった。
「ちょっと……待って。」
愈々(いよいよ)、挿入と云う刹那、突如、夕子が喘ぎの中から声を挙げた。何事かと心配する伝一郎を余所に、彼女は半身を起こして確(しっか)と愛しき男の背中に手を廻すと、その瞳を見据えた。
「どうした?」
「到頭……一つに成れるのですね。」
「そうだが……。一体、どうしたんだ?」
不可解と云う伝一郎の言葉を無視し、夕子は此処に来て、再び、祖略(ぞんざい)為る言葉を吐いた。
「貴方。もし、私を捨てたら、只じゃ置かないから。」
此の事に及んで、冷徹為る云い回し。だが、伝一郎は、その言葉に微笑んだ。
「判ってる。もし僕が裏切ったら、君に全財産をあげるよ。」
「そんな物じゃ足りないわ。貴方の命を下さいな。」
「いいさ。煮る為り焼く為り好きにしてくれ。」
伝一郎はそう云い放つと、腰を押し付けて行った。正に売り言葉に買い言葉。そんな突飛な情況で、二人は想いを成就させたので有る。
最初は強い昂りの為か、伝一郎は意思に反して激しく腰を打ち付け、呆気なく果ててしまった。が、昂りは止む事を知らず、直ぐに花門の中で剛直を取り戻すと、再び、腰を動かし出した。
一方の夕子も、固く閉ざされた花門に剛直為る摩羅を突き立てられ、肉襞の奥に至るまで抉じ開けられる際は、剰りの激痛に苦悶の声を挙げた。
しかし、猶々(なおなお)、愛しき人と一つに成れた喜びが勝り、唯々、男の身体に寄り縋がり、されるがまゝと為っていた。
道ならぬ恋は、到頭、後戻りの効かない情況を迎えたので有った──。
「ガラパゴス・ファミリー」前章〜惜別T〜完
※1眷顧 :特別に親しくなる
※2間者 :スパイ
※3知恵足らず:知能発達の乏しい者
※4矯めつ眇つ:様々な方向から見詰める
※5仮粧 :化粧
※6賎人 :部落民
※7朝鮮人 :朝鮮併合による出稼ぎ
※8不純異性交遊:デート
※9三圓 :当時の1円は1,300円程
※10戦争 :日露戦争
※11炭鉱長屋:約20m2
※12三和土:コンクリートの土間
※13山鳩色:灰模様を含んだ黄緑色
※14嘩尼爾拉:バニラ・ビーンズ
※15傾城 :遊女、花魁
※16娼妓 :素人の売春女
※17吉門 :クリ〇リス
※18口取り:フェ〇チオ
※19花門 :膣口