前章(四)〜惜別T〜-33
「あっ!くう、うっ、ああっ!」
最早、為されるがまゝ。全身は更に鋭敏さを増し、怒濤の如き快感に由って過分為る艶声を連呼する。その姿は今朝見た、情欲に狂った牝っ振りを伝一郎に思い出させ、剛直と化した摩羅の鈴口を濡らす程に昂らせた。
既に、準備万端で有るが、此のまゝ事を完遂させるのは、些か癪で有る──。伝一郎の中に、小さな心驕りが芽生えた。
「夕子……。」
執拗な責めに由って臥(こや)り、未だ、気をやったまゝに有る夕子の半身を強引に起こし、伝一郎は耳許で囁く。
「──好き合うた者同士の目交わいは、呼び水として互いに舐(ねぶ)り合うんだ……今度は夕子がやってくれ。」
夕子は意味を解せず、返答に詰まっている。そんな彼女を伝一郎は傍に寄せると、自らの股間へと導いた。
「──僕の摩羅をしゃぶって、尽くしてくれ。」
男は、少女を試したので有る。激しい勢いで迫って来た愛に偽りは無いのか、確めたかったのだ。
「初めてかい?勃った摩羅を間近で見るのは。」
「此れを……銜(くわ)えろと? 」
「そう。先ず、真っ赤に膨れた雁首を銜え、舌の先で舐め上げるんだ。」
夕子は、熱(いき)り勃つ伝一郎の一物を矯めつ眇つ見詰めた後、そっと雁首の辺りを指で触れた。
熱く為った剛直は鼓動に合わせ、律動を繰り返している。
「今にも弾けそうに腫れて……此れは?粗相を為さったのですか。」
鈴口の濡れが、気になる様だ。
「女(おなご)同様、男も昂る事で濡れるんだ。夕子の応じ具合を見て、僕も興奮しているのさ。」
「何とも……滑っていて、糸を引いてます。」
「それを舐り取り、飴を舐める様に口に含み、舌で転がしてごらん。」
夕子は目と鼻の先迄、顔を近付けて見る。噎(む)せ返る程の“雄”の臭いを初めて嗅ぎ、少女は心を躊躇わせる。
だが、夕子はあっさりと決意を固めると、伝一郎の一物を銜え込んだ。
「歯を立てず……ああ……そうだ。丹念にしゃぶるんだ。」
云われるまゝ、必死に舐める夕子。その拙い舌遣いが尚更、男の気持ちを昂らせた。
「じゃあ……次は口唇を窄(すぼ)めて、根元迄、銜えてくれ。」
言葉通りに、夕子は小さな口唇を一杯に広げ、陰毛が頬に触れる程、咽喉の奥まで飲み込んだ。
「そして……口唇は窄めたまゝ、雁首まで戻すのを繰返すんだ。」
咽喉の奥に一物を飲み込み、少女の顔は見る々、苦悶を訴える。吐き出したい衝迫(しょうはく)を必死に堪え、夕子は上体を上下させ出した。
「いいよ、夕子。もっと……もっと上下するのを速く。」
苦しさに泪が溢れ出て、口許は早くも唾液に塗れている。忙しなく鼻で息を繰返し、間近で想い人の臭いに触れている事により、夕子は更に興奮の度合いを高め、段々と、上下する動きに激しさが増して行った。
「夕子。銜えたまゝ、僕の身体を跨いでごらん。」
最早、思考も儘成らないのか、夕子は逡巡(しゅうじゅん)する事も無く、伝一郎の面前に女陰を晒け出す。