投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「ガラパゴス・ファミリー」
【近親相姦 官能小説】

「ガラパゴス・ファミリー」の最初へ 「ガラパゴス・ファミリー」 113 「ガラパゴス・ファミリー」 115 「ガラパゴス・ファミリー」の最後へ

前章(四)〜惜別T〜-31

「──自分でも、望んで此処に来た筈なのに。な、何故だか……。」

 ──女とは摩可不思議な生き物だと思う。先刻迄、毛穴中から発情した雌の臭いを発散させ乍ら、男の一物に触れ、その先に待つで有ろう婬靡為る情交を望んでいたのが、それが今では、すっかり心を竦(すく)めている。
 此処に及び、未練では有るが、此の先は諦めて、次の機会が訪れるのを待つとしよう。

「此処迄にして置かないか。」
「えっ?」

 伝一郎の言葉が意外と思えたのか、夕子は、胸に埋めていた顔を上げた。

「その気に為れない君に、此れ以上は無理だ。此のまゝ無理強いすれば、後々に迄、悪い影響を与えてしまう。」

 そう語る想い人の目に“諦め”が映っている。夕子は不覚の中で、二度三度と首を振っていた。

「貴方は……御優しい方ですね。」

 夕子は敢えて、“貴方”と口にした。

「──私の事を真っ先に考え、気遣って下さる。でも、私の心は、そんな事を望んでいないのです。」
「君の云ってる意味が判らないよ。一体全体、僕に何をしろと云うんだ?」

 伝一郎は夕子の変化に戸惑いつゝも、苛立ちを募らせる──。年増女としか関係を持って来なかったが故に、夕子の振る舞いが“稚児の我儘”の様に思えてしまい、その真意を掴め切れない自分に腹を立てていたのだ。
 そんな想い人の感情を察した様に、夕子は粗略(ぞんざい)な言葉を吐いたので有る。

「い、何時もの様に……私に、む、無茶な欲求をして見なさいよ!私の困る顔を見て、気色満面な顔をしている癖に。」
「……。」
「他人を困らせて、そう仕向けて……初めて逢った日、どんなに嫌だったか!」
「き、君は……。君は、そうやって自己保身に走る心算なのか?
 だったら云わせて貰うが、初日に接吻を強要して以降、次第に自ら望み、快楽を貪る様になって行った事実は、如何様に辯明する?」

 互いが本音で啀(いが)み合う──。その様は、実に醜悪なる姿で有れど、好き合うた者同士為らば云わずもがなで、そこに違和感は生じ無い。
 逆に、本音を吐きもせず、互いに忖度(そんたく)を繰り返す様な姿を、愛に例える事は無い。云わば、伝一郎と夕子は、苟且(かりそめ)の関係から本物に成ろうとする段階を迎えたので有る。

「だから、それも全部、貴方のせいじゃないの!私をこんな風にしておいて、今更、辞めようなんて逃げないでよ。」

 烈火の如き求愛の姿──。夕子は、全てを晒け出して想い人を迫い詰め様とする。一方、伝一郎は困惑の中に有った。斯様な情況を迎えるなど、夢想だにしていなかったからだ。
 彼は、実母菊代との愛を縄墨(じょうぼく)とした事に由り、独り善(よ)がりな愛情表現しか身に付けて居らず、それを相手が受容する、云わば、不均衡な愛の形以外、知らずに生きて来た。
 それ故、形振りから想像も出来ない激流の如き情愛に対し、如何様に応えるべきか見出だせずに居たので有る。

「僕は、き、君の気持ちを慮(おもんばか)って、云ったんじゃないか。それを悪いと云うのか?」

 伝一郎は、明らかに平静さを欠いている。想い人の判然としない態度に業を煮やした夕子は、何故か、自ら着物の紐を解き出した。

「な、何をするんだ!」
「よく……見てなさい。」

 ずっと、惚れ合って嫁ぐ事に憧れを抱いていた──。しかし、現実は愛し、愛される事とは無縁な刻を過ごして来た。
 だからこそ、歳近い主の息子の世話係を仰せ仕った時には、淡い幻想を抱いて胸躍らせた。
 ところがで有る。就いた初日に“物の如き扱い”を、された事に由って幻想は脆くも打ち砕かれ、代わって憎しみが涌き上がって行った。

 それ以降、連日に及ぶ辱しめに心底、嫌悪を抱いていたのだが、有る日を境にして“快感”と云う楔を身体に打ち込まれ、逃れる術を失った。
 そこから、恥辱な扱いをされ続ける内に、心情とは真逆に辱しめを欲する様に変わり、軈て、心酔して行く自分に驚きを覚え乍らも遂には、気持ちを抑え切れないのを認め、日々、恋々足る想いに身を焦がす迄に堕ちていた。


「ガラパゴス・ファミリー」の最初へ 「ガラパゴス・ファミリー」 113 「ガラパゴス・ファミリー」 115 「ガラパゴス・ファミリー」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前