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「ガラパゴス・ファミリー」
【近親相姦 官能小説】

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前章(四)〜惜別T〜-23

「どうして、それを隠そうと為さったんです?」
「此の歳になって、小さな子供の世話を焼いてるなんて知れたら、体裁悪いだけだろう。」

 全てでは無いが、心の奥底に有った蟠りを少しは吐き出す事で、今迄より気は楽に為った事で、伝一郎は表情を和らげる。それは、夕子も同様で、もっと生臭い艶話を聞かされると身構えていたのが、肩透かしに終わった事と、色恋沙汰と違う心和む話に、心から安堵の表情を見せた。

「──今年、初めて連れて行ったら、それ以来、会う毎にせがまれる様になってね。母親からは叱られたけど、何度も食べさせたんだ。」

 そう答えた伝一郎は、伏し見勝ちに照れた様子に為る──。此れも又、夕子にすれば意外な一面で有り、何時しか、慈愛に満ちた瞳が、想い人の顔を眩し気に見詰めていた。

「伝一郎様が、子供好きだったなんて、ちょっと意外でした。」
「おいおい、参ったな。君の黒曜石みたいな瞳は、僕を、どんな人間に映しているんだい?」

 問い掛けに、夕子は大袈裟な腕組みをし、天井を仰いで思案する真似事を見せた後、はっきりとした口調で云った。

「そうですね。子供の部分と大人な部分が同居している……。そんな感じでしょうか。」
「学友達とは、全く違う意見だな。」

 既に、千代と幸一と云う子供達の父親故、学友からは一様に“年上の様だ”とする意見を多く聞いていた故に、一寸、意外な感想に伝一郎は、強い関心を持った。

「日頃の落ち着いた物腰は、年上を感じさせてくれます。でも……その、さっきみたいに本能のまゝと云うか、感情が先走った時には……あの、子供が持つ“無邪気な残酷さ”が顕れるみたいで。」

 夕子の感想は、伝一郎を愕然とさせた──。何年もの間、寝食を共にして来た学友達より、世話係に就いて僅か一週間足らずの少女の言葉は、自分を的確に捉えていたからだ。

──何て事だ。此れ程、秀でた能力を授かり乍ら、下女として仕える事に甘受しなければ為らないとは。彼女に、学ぶ機会を与えてやれば、将来、事業の助けと為って大いに役立ってくれる事は、疑念の余地も無い。

(父さまに進言してみよう。許しが出れば、学校の費用なんて微々たる物だ!)

 封建制度の崩壊から僅か四十六年。立憲政治に由って、人民としての権利が保障される様に成ったとは云え、選挙は未だ、男達だけの物で有り、依然、男尊女卑は顕在で有った。
 当然、女(おなご)が学業を修める事に否定的な意見が多勢の中、伝一郎は全く異なる意見の持ち主で、即ち、優れた者なら、性別、年齢不問と云う考えを抱いていたので有る。
 自らと同様、夕子が最高学府の学業を修める事で、将来、跡目を継いだ折りには、女ながら、俊傑と成るだけの才に長けていると踏んだので有る。

「どう、為さったのです?」

 つい、妄想に耽ってしまった様だ。

「ああ、ちょっと考え事をね。」
「急に黙って仕舞われて、難しい顔を為さったかと思ったら、今度は一人、にやけ顔で……。」
「そ、そんなに?」
「嫌ですよ。未だ、何か隠してらっしゃるんじゃ……?」

 再び、疑いの眼が伝一郎を捉える。が、今度は慌てた様子も無かった。

「失敬な。君は余程、僕の事を信用出来ない様だね。」
「お、女(おなご)の扱いに長けた殆どの方は、その……た、度重なる痴情の縺(もつ)れを経験している筈だと、聞き及んでますので。」
「誰が、そんな事を?」
「その……ね、姐さま方が。」
「成程ねえ……。」

 夕子の言い分に、伝一郎は思わぬ溜め息を漏らす──。所謂(いわゆる)、耳年増と云うやつで、好いた者との情交に一度として及んだ事の無い女(おなご)が、如何にも男の全てを識り尽くした手練れの如く、男の性を語る事で、此の場合、戦争未亡人で有る上女給以外の全員が条件に合致する。
 分けても夕子と歳が近く、その上、同部屋の重美と亮子と云う年若い娘子三人なら、毎夜、囂 (かしま)しく噂話に終始していても可笑しくない。


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