出会ってしまった-9
一瞬、送ろうか迷ったが、
(あかんやろ、でも、まっ、これで終わりやな。返事が来たら奇跡やわ。でも、来たら?まさか、な、、。)
少し、唇を噛み、携帯の上を指が滑るように動いた。
空のカップを返却コーナーに置き、ユックリと店を出ながら、ワタルは二階のテラスに上がり喫煙コーナーに向かった。
「ええ天気やな、死ぬにゃあええかもしれへんなぁ。」
思わず独り言のように、つぶやいている自分に苦笑しながら、紫煙の行方を目で追っていた。
夕方の販売も峠を越えたころ、エリカは携帯の着信ランプの点滅に気がついた。
「宮田さん、チョッと代わってね。トイレ、ね。」
「あっ、うん、わかった。いいわよ。」
由美が軽くウィンクしながら、手を振っていた。
トイレで個室に入ると、急いで携帯をチェックした。
(ガンガンさんからだわ。えっ、そんなん、どうしよ?)
エリカの頭が一瞬、混乱していた。
もう一度、画面をチェックしながら、彼女の指先が迷いながら画面の上を滑り始めた。
「いえ、私は本気です。
からかってなんかいませんよ。
ガンガンさんさえよければ、私を奴隷にしてください。」
ふうっ、と大きく息を吐きながら、
(これで、いいわね。でも、これじゃ変よね?ばかっ、どんな男かもわからないのよ!いえ、だから、いいのかも、、)
自分の気持ちに困惑しながら、エリカは送信していた。
「こんなあ(来ないなあ)?ヤッパ露骨に聞きすぎたかな?まあ、そんなもんやろか?そろそろ会社も、辞め頃やしな。」
買い物から自宅に帰り、夕食の準備をしながらワタルは独り言をブツブツつぶやいていた。
ただ、自分がなんでまだ死んでないのか、夕食をなんで作っているのか、理由がわかっているが彼自身認めたくない気持ちと、期待している気持ちとがせめぎあい、混乱していた。
夕食をユックリと食べながら、テレビを見るとはなしに見ていた。
すると、ポケットの中の携帯がヴヴッ、ヴヴッと震動し、YAYAからのメールの着信を教えた。
(えっ、本気やて!引っ掛けやなかったんや!うそっ、どうしょ?いや、本気やったら、嬉しいけど?試す価値はあるかな?失敗したら、ま、ほのときに死んだらええねん。)
読み返しながら、ワタルは生きる希望が沸き上がるのを感じていた。