出会ってしまった-8
夕食のチョイスを由美に任せることにして、エリカはロールケーキを片付けることに専念した。
ロールケーキが片付いたころ、由美が、じゃあねと言いつつ店に降りていった。
(うふ、面白い人。でも、これで晩ごはん一人で食べずにすむわ。おりようかな?)
ふっと立ち上がり、自分の皿を片付け終わり、ロッカーの前に立っていた。
少しためらいながら、ロッカーの中から携帯を取り出し、チェックしていた。
「あっ、返事が来てる。えっ、うそっ、私が?うーん、、。」
思わず声に出しながら、ガンガンからのメールに少し動揺している自分に、エリカは驚いていた。
そのまま携帯をポケットに入れようとしたが、
(返事、でも、そうね。一度は経験するのも、いいかな?)
突然、思考の糸がフワッと飛んだ感覚がエリカを捕らえ、彼女に崖を飛び越えさせた。
「奴隷?
私が?
考えたことも、なかったですね。
でも、面白いかもしれないですね。
ガンガンさん、私が奴隷になりたいっていったら?」
打ちながら、エリカの唇に微笑みが浮かんだ。
(なにやってんの?これだったら相手は本気にするわよ。本気にしたら、困るんわ、あんたよ!けど、なんか、ゾクゾクしてる。こんなん初めて、ウフッ。)
そのまま送信して、携帯をポケットにしまった。
エリカが仕事に戻った頃、ワタルはショッピングモールの
一階にあるスターバックスの一番奥に座りコーヒーを楽しんでいた。
(ヤッパ、あまいなぁ、スタバのこいつは。けど、これがたまらんのやわ。)
思わずにやけている自分に、ワタルは心の中で苦笑していた。
コーヒーを飲み終わり、余韻を楽しんでいると、テーブルの上でヴヴ、ヴヴ、と鈍い音と振動が伝わった。
慌てて携帯をつかむと、YAYAからだった。
(えっ、どうするって?まさかな?本気やないわな。まあ、聞いて来てるだけやし、合わせてみるかな?まあ、ダメヤロシ。)
YAYAのメールに思わず、ワタルの心が踊っていた。
携帯の上を指が走った。
「えっ?
YAYAさん、奴隷だよ?
本気じゃないよね?
でも、YAYAさんが奴隷になってくれるなら、、。
なんて、ないよね。
でも、あなたが本気なら、ね。
考えなおしても、いいかな。
なんてね、オジサンをからかっちゃだめだよ。」