出会ってしまった-6
「そうやったん?うふっ、後藤さんやから店長と話でもしてんちがう。」
軽く由美に答えると、
「あはっ、そうやね。あの二人、できてるって噂やしね。」
プッと、互いに顔を見合せ吹き出していた。
軽く笑い飛ばし、由美との会話を楽しんでいたが、
「あっ、もうこんな時間やん、私、下に降りるわ。」
由美がお弁当を仕舞い始めると、
「えっ、あっ、ほんまやね。ほな、後でね。」
あわてて由美に答えながら、エリカも食べる速度を少しあげた。
由美が店に降りるのを確かめると、エリカは携帯を取り出した。
(えっ、泣いてくれる奴隷?どういうこと?つまり、奴隷がいたらやめるってこと?そんな!)
エリカはガンガンのメールに理不尽さを感じたが、同時に奴隷という言葉に甘く痺れるような感覚が、彼女を捕らえた。
そして、メールで一度だけ経験したガンガンとのメール調教を、思い出していた。
(うふっ、そうやわ、面白いかも?)
エリカの瞳にイタズラっぽい微笑みが宿った。
「もしかして、泣いてくれる奴隷がいたら考え直してくれるってことですか?
そんなことは、ないですよね?」
メールを書き上げ、クスッと軽く笑いながら送信していた。
(引っかかるかしら?でも、ひっかかったら、なんてないわよ。)
エリカは、ガンガンの返信に期待している自分に、少し驚いていた。
携帯を仕舞いながら、休憩時間の終わりが近いのを確かめ、急いでお店に降りていった。
午後の三時を回りエリカは、壁の時計が気になりはじめていた。
「中本さん、どしたん?時間が気になるん、珍しいなぁ、中本さんが休憩時間気にするんて。あっ、ひょっとして彼氏?」
「えっ、違う違う、うちの父親と母親が二人で旅行に出掛けてて、連絡がくる予定なんよ。ほんで、気にしてるんよ。」
エリカが、そう答えると由美が納得したように、
「へえ、中本さんとこ仲がエエんやなぁ。ホンなんやったら、携帯ポケットに入れといたらエエのに。」
最後の方はエリカにだけ聞こえるような、囁くような声だった。
えっ、とエリカが由美の方を見ると店のユニフォームのスカートのポケットを指差し、エリカに軽くウインクした。
エリカも由美に指先を丸め、OKの合図を送った