出会ってしまった-5
ワタルが目覚めたのは、お昼少し前の十一時過ぎだった。
パジャマのまま歯を磨きながら、ワタルは昨夜の携帯の受信ランプの点滅が頭から離れなかった。
(YAYAさんかな?まさかな?けど、返信してもおんなしことしか、書いてないやろしな。心配はしてくれてるみたいやけどな?どつする?)
正直、ワタルは迷い始めている自分に、半ば呆れ返っていた。
携帯をチェックすると、YAYAからのミニメールが届いていた。
(ヤッパリな、けんどどうしようかな?俺のメール見てないんやな。見てるけど、あえて無視かな?どうしょ?)
スウッと静かに、この世から消えるつもりでいたワタルだが、YAYAとのメールで引き止められ、むしろ彼女とのメールを楽しみにしている自分に気付き始めていた。
「ありがとう、YAYAさん。
俺にはあなたの気持ちが嬉しい。
でも、もう泣いてくれる女性というより、奴隷もいないんでね。」
文章をチェックしながら、
(これって、誘ってへんか?かもしれんなぁ。ひょっとして、興味あるんかな?この娘に?俺が?まさかな?けんど、もし反応があったら?ないわな。けど、アッホ、なに期待してんねん。)
迷いながら、そのままにして洗顔をし、遅めの朝食をとった。
新聞を読みながら、テレビの音だけを聞き流していた。
お気に入りの番組を見ようと、リモコンに手を伸ばした瞬間、カタンと床に携帯が転がっていた。
携帯を拾いながら、
「あっ、携帯!忘れてたな、送っとくか?どうせ、相手にもしてくれへんやろし。」
思わず声にだしている自分自身に、ワタルは驚きながら送信をしていた。
返事を期待していないので、ワタルは軽くシャワーを浴び、浴槽に湯を張った。
浴槽に身を沈めながら、ボンヤリと体を温めていた。
一方、昼食のお弁当を取ろうと自分のロッカーを開けた拍子に、カタンっと携帯がエリカの身体に転がり落ちた。
両手で携帯を受け止め、
(もう、なんで落ちるのよ。えっ、なにか来てる?お昼が先ね。)
ガンガンからかもしれないと、思いながら、昼食を優先させることにした。
休憩室のテーブルにつくと、同僚の宮田由美が先にお弁当を広げていた。
「遅かったんね?後藤さん早めに出たみたいやったけど、どしたんやろかな?」
ヤッパリと思ったが、だまっていた。