出会ってしまった-13
メールを確かめながら、
(えっ、泊まり?そこまで考えてなかったな。けど、むこうがその気やったら、俺は、ほれに(それに)答えてあげんといけんなぁ。けど、ええんかいなぁ?話がうますぎるし?)
ワタルの中に、罠の匂いがプンプンし始めていた。
(さあて、断る理由はないし、ダメ元で行ってみるか?)
そう考えると、ワタルの決断は速かった。
携帯の上を滑るように指が動いた。
「泊まりですか?
驚きました、エリカさん。
泊まりの方が時間のゆとりがありますからね。
いいですよ、場所は坂出でもいいですが、あなたの知り合いの少ない高松はどうでしょうか?」
胡散臭さを感じながら、そのまま送信した。
布団に半分潜りながら、エリカは音楽を楽しんでいた。
昼間の疲労が心地よく彼女を眠りの世界に引き摺りこもうとしていた。
携帯の着信音がエリカを、眠りから引き戻した。
(えっ、高松?あっ、地元じゃ知り合いに見られるもんねぇ。けど、泊まりOKやわ。どうしよう?でも、私から言うたんやし。)
ワタルのメールに戸惑いと、期待と、不安とがエリカの中で渦巻き混じり合い、混乱していた。
「高松なら、いいですよ。
知り合いも少ないですから。
あの、私、ずっと前から自分が調教されるのが、夢だったんです。
前に、あなたにメールでされたときにあんなに感じたのは、初めてだったんです。
だから、実際に調教されたらって思うと、それだけで、、」
(いけない、なに書いてるの?ばか!でも、うそじゃないし、いけない、相手の思う壺よ。)
エリカは心の中で否定しながら、自分が以前のメールでの耽美な体験が蘇り、思わずエリカの女が熱くなるのを止められなかった。
エリカの返信を待ちながらワタルは、明日持っていく道具のチェックを始めていた。
(うん、携帯?エリカさんからかな?えっ、ホンマか!)
メールの最後の一行を見た瞬間、ワタルの中に疑問と、ある決断をさせた。
「じゃあ、明日高松駅で、十時はどうでしょうか?
それと、これから電話で話しませんか?
だめかな?」
返事が来るかと不安になりながら、エリカからの返信をワタルは楽しみに待っていた。
道具をバッグに詰め終わるころ、携帯が点滅をはじめた。