悪夢のエスカレート-1
くよくよしてばかりもいられない。人々が耐える事なく様々な場所へ向かうアウトレットモール入り口付近、そこで私は大好きな恋人風馬君とデートする為、今か今かとそわそわと鞄を両手に握り待っていた。
「まだかなぁー。」
別に彼が遅れている訳ではない、私が早く来過ぎただけだ。
佐伯君のつきまとい行為は未だ止む気配を見せない、いやそれどころかますますエスカレートしている。
その度に沈む私の心、そこに風馬君が気分転換にと私をデートに誘ってくれた。
「楽しい事、夢中になる事が出来れば嫌な考えも吹っ飛ぶ。」
私の気持ちを真の意味で理解しそれで掛けてくれた言葉、その時の彼の優しい顔が今でも脳裏に浮かぶ。
辺りを何気に見渡すと楽しそうな家族連れやカップル達、…私も彼もいつかはあんな風に悩みが嘘のように吹き飛ぶ日が来るのだろうか?
「おーーいっ!」
すると後ろから聞き慣れた少年の声が。
私は風馬君がやっと来たんだと浮かれあがり微妙に違う声に疑いもせずに振り向く。
そこにいたのは私を幸せにしてくれる人とは真逆の人物で…。