悪夢のエスカレート-3
アニメやドラマのDVDは巻き戻せばいつでも同じ光景を観れる、でも現実はそんな事絶対にない、タイムマシンもこの世には存在しない。
けど今私が目にしている光景はまさにそんな常識を疑うようなものだった。
「……。」
「………。」
今日はどんな洋服を買おうかな、今日はどんな料理器具が売ってるかな、新作のアイスが発売した、早速食べに行こう♪
そんな華やかで明るい思想を浮かべ軽足で建物へ入っていく人々。それとは対照的に場違いとも言える程に冷たくそして灰色なまでに暗い空気を出す私達。
今カレと元カレ、そして親友同士だった筈の二人が鋭い目で睨み合う。
「風馬、君…。」
その顔はもはや青森で固い絆で結ばれた親友とは到底かけ離れたものだ。
「佐伯、君…。」
愛する者を敵から払うような表情と思いきや、その顔は何処か敵視…と言うよりも実に残念そうな顔だ。
「んだよ、俺はこれから彼女とデートを。」
それでもお構いなしにいきしゃあしゃあとする彼に風馬君はツカツカとそんな彼へ近寄る
「おっ、何だよやる気か!?」
最悪の地獄絵図が脳裏に浮かび。
「やめてぇ!」
思いも経ってられず声を挙げる、すると。
「もうやめてくれ!」
「?」
佐伯君の胸倉でも掴むかと思ったらそんな私の不安を他所に彼は手荒な真似をするでもなく彼の両腕をガシッと掴み、目をしっかりと合わせ訴える。
「君が彼女を好きなのは分かった、そういう気持ちは抑えたくても抑えられない、それはよく解る!」
「………。」
「嘗て僕もそうだったよね?嫌がる若葉ちゃん、それを必死に護ろうとする佐伯君、一条君に伊吹さんも皆で僕というストーカーから護ろうとしてた。にも拘わらず僕は彼女が好きな気持ちを抑える事が出来なかった!」
殴りたい気持ちを必死に抑え佐伯君を、嘗ての親友に分かってもらおうと力強い説得を続ける彼。
「でもある事がきっかけで目を覚ましたんだ。僕が君を刺したそのせいで彼女は大泣きしていた、今でも時より思い出す、そしてその度に後悔した自分を死ぬほど憎んだ、僕の馬鹿野郎!自分が良い関係になりたいからって大切な人を傷つける何て!…そう考えたらもう彼女に付きまとう事、ううん!近寄る事さえ自粛した。」
「……。」
「だからこんな事はもうやめてくれ、僕の知ってる友人は。」
「はいはい、要するにそんなに好きなら傷つけるなと、そういう話だろ…。」
「佐伯君。」
「前に言ったろ?お前らを傷つけてしまうのは百も承知だって、だから。」
「……何だよそれ、結局あの時の僕と同じじゃないか!自分が振り向いてもらえるなら他人何か傷つこうと何だろうと構いってのか!」
「お前じゃ彼女を幸せにする事は出来ない、だから。」
上手い事話しを切り抜けて。
「兎に角今日の所はもう帰る、また明日な。」
バツ悪そうにその場を後にする。
「佐伯君!」
「うるせぇ、気安く呼ぶなお前とはもう親友でも何でもない敵同士だ!」
「っ!」
巨大な鎌で胴体をバッサリ斬りつけられたようなそんな気分。
「うっ、うう…。」
魂が抜けたように力なくその場で崩れるようにしゃがみ込む。
「若葉ちゃん…。」
そんな私にそれ以上かける言葉もなく私を包み込むように抱きしめる彼。