光の風 〈聖地篇・序章〉-1
遥か昔、太古の世界で神々が一つの国で過ごしていた頃、人々を作りそして国を作った。
太古の国の名はオフカルス。そこの第一皇子がカルサであった。しかし彼は現代に生き、オフカルスが作り出した国の一つ、シードゥルサの国王でもある。
オフカルスでの光の神としての力を持つ、雷神として生きている。
『太古の因縁』を胸に秘めて、その亡霊と戦う日々を送っていた。
「カルサ!」
廊下を歩いていると後ろからリュナがカルサを呼び止めた。カルサはゆっくり振り返り、小走りで近づいてくるリュナを見て愛しそうに微笑んだ。
笑顔いっぱいで走ってくる彼女を見たら、愛しくてたまらなくなる。
「どうした?」
「え?ううん、見つけたから呼んだだけなの。」
息切らし、離さないように手はカルサの服をしっかりと握っていた。
最近何かと神経を張り詰めることが多くなったカルサは、リュナが癒しだった。リュナはカルサの周りで緊迫した状況が増えているのをなんとなく感じ、なるべく接しようとしていた。
一瞬でも全てを忘れて笑えるように。
それで少しでもカルサの精神が和らぐように、彼女なりの守り方だった。
「そっか。今からナルの所へ行くつもりだが、一緒に行くか?」
「ナル様の所に?」
シードゥルサの国専占者ナル・ドゥイル。多くの者から信頼、支持を受け、確かな力を持つ占い師だった。
「ちょっと用があってな。どうだ?」
「行きたい!ナル様に会うのは久しぶりだもの、嬉しいわ。」
二人はナルの所に歩きだした。道中二人は他愛のない話を繰り返していた。一緒に居る時くらいは何もかも忘れられるように。最初はリュナの気遣いからだったが、いつしかそれが楽しくなっていた。
カルサが笑ってくれている、それがリュナの笑顔を生んでいた。そんな彼女にカルサがどれだけ守られているか、彼女自身は知らない。
そうこうしている内に結構な距離を歩いていた。城の中の複雑な造りの先にナルの部屋がある。
カルサは迷う事無く進んでいった。ナルの部屋の前に人影がある。先にそれを気にしたのはリュナだった。
「カルサ…あれって。」
「カルサ、リュナ!なんや、あんたらかいな!ナルに用でもあるん?」
「警護ご苦労だな、紅奈。」
軍服姿の紅奈が二人を出迎えた。ナル・ドゥイルが誰か来ることを予感した為、紅奈は外で待機していたのだ。