光の風 〈聖地篇・序章〉-4
なので、リュナからも何も言うことが出来ない。沈黙の時間が流れた。
(まだ…早いのかもしれない…。)
カルサの頭のなかに何度もよぎる思い。まだすべてを伝えるのには早いのかもしれない。
「御剣の総本山というものがあるんだ。」
「総本山?」
「すべての御剣をたばねる場所、人物がいる。どの御剣も一度は行く場所と言われている所だ。そこに行こうと思う。」
カルサは一つ一つ、確実に彼女に伝わるように丁寧に話した。リュナもそれに応えてすべてを理解しようと真剣にカルサの言葉を聞く。
「場所は、この世界じゃない異世界にある。どこの空間にも属していない空間にあるんだ。」
「そんな場所に、どうやって…まさか、界の扉?」
界の扉をリュナが知っているのは意外だった。
「でも、どこにあるかは誰も知らないって言うけど…カルサ?」
カルサは小さな自分にも聞こえないくらいの声で、驚いたな、と呟いた。御剣の事をそれほど知らない彼女がなぜ限られた者しか知らない界の扉を知っているのか。
カルサは一つの可能性に気付いた。
「風蝶のババに聞いたのか?お前のお祖母さん、だったよな?」
「ええ、お祖母さまに。」
リュナの祖母である風占い師の風蝶のババは、博識だと以前カルサは両親から聞いていた。それならばと納得はしたが、少し気になることがあった。
カルサはその気持ちを押さえ話を続ける。
「方法は界の扉を使って行く。できれば明日にでも出発したいんだが、行けるか?」
その言葉にリュナは驚き固まった。まさかの発言。
「私も、行っていいの?」
ナルの部屋の会話では、カルサ一人が出掛ける雰囲気だった。まさか自分もその中に入っているとは思わなかったのだ。
「後で部屋に誘いにいこうと思ってたんだ。リュナ、一緒に行かないか?」
「二人で行くの?」
「ああ。イヤか?」
まさかそう聞き返されると思っていなかったカルサは当然のように聞き返した。
あっけらかんとしてリュナを見る。リュナは頬を薄紅色に染めてはにかんで答えた。
「うれしい。」
そう言ったきりリュナははにかんだまま言葉を続けなかった。その雰囲気から彼女の嬉しさが伝わってくる。
カルサは訳も分からずリュナを見ていた。
その視線に気付いたリュナが恥ずかしそうに言葉を続けた。
「だって、初めてでしょ?二人で出かけるの。」
ああ、と言いながら頷いた。まだリュナの言葉の意味にカルサは気付いていない。