光の風 〈聖地篇・序章〉-3
膝の上で重ねていた両手から、右手を上げ二人の目の前で弧を描く。ナルの描いた弧から光が生まれ、やがて一枚のカードが浮かび上がった。
刀が描かれたカード。
「裏切りの刀…いつかあなたを襲う。」
「裏切りの刀…。」
ナルの言葉に先に反応したのはリュナだった。リュナの目はカードに釘づけだった。
「出来る限り力を貸しましょう。思うようにしてきなさい。」
ナルは立ち上がり、カルサの頭を引き寄せ抱きしめた。照れて離れようとするが、ナルはしっかりと抱きとめた。そして背中をぽんぽんと叩く。
「いい？必ず無事に帰ってきなさい。ここがあなたの家なのだから。」
優しく暖かな空気に包まれる。力を抜ける空間だった。カルサは頷き、約束すると誓った。
「あなたもよ、リュナ。」
予想外の展開にリュナは驚く。ナルはリュナをしっかりと抱きしめた。
「自分を犠牲にする行動をしてはダメ。あなたが笑っている事がカルサの幸せなの。」
「ナル様…。」
「あの子を幸せにしてあげてちょうだい。」
懐かしい匂いにリュナは涙を流した。暖かい愛情を感じる。リュナは何度も頷き、約束すると誓った。
そして二人はナルの部屋をあとにし、カルサの部屋へ向かった。
部屋に入るとカルサはリュナをソファに座らせ、自分はその向かい側に座る。今から真剣な話をする事は明白だった。
さっきのナルとカルサの会話をリュナはひとつも理解をしていない。出てきた言葉が何を意味するかも分からない。
ただ分かったのは、カルサがどこかに出かけしばらく留守にすること。そのサポートをナルがするという事だった。
「リュナは御剣の事をどこまで理解している？」
いつにない真剣な表情。それを聞いてどうするのかは分からないが、試されているのではない事は分かる。
「太古の世界で神々が持っていた力を受け継いだ末裔。強い特殊な力を持つ。」
リュナは思い出しながら呟いた。カルサは黙って聞いている。
「中でも五大元素の力は特別だと…聞いたけど…。」
カルサの様子を伺うようにリュナは見た。カルサは真っすぐにリュナを見つめている。
何も言わない様子を見ていたら間違えているのかと思ってしまうくらいだった。真顔のままカルサは一言も発しない。