犯人は・・・？-1
月に照らされた風鈴の、影法師が虚しく揺れている。脆くも床に崩れ落ちた僕の目の前で。
あぁ、何故こうなったのだろうか？
僕はただいつものように会社で我が社目玉の激安アメリカ旅行の案を課長に出し、いつものようにコンビニで発泡酒を買い、家に帰宅した。
これからいつものように良く思っていない会社への不満を酒で紛らわそうとしていた。
なのに僕の家には家族でもない、友達でもない見知らぬ人がいて、それに僕は腹部をナイフで刺された。
意識が朦朧とする。どうにかして、犯人をしめすためのダイイングメッセージを残さないと・・・・
―――………
「本田刑事、ご苦労様です。」
新米の警官がオレに挨拶をしてくる。
「おぅ、さっそくだが事件の詳細は？」
「ぁ、はい、被害者は27才の旅行会社の会社員。第一発見者はこのアパートの大家で今日がたまたま集金日で、11時頃、集金しにきたところ発見した模様です。一人暮しで、どうやら家に帰宅した所、家に潜伏していた何者かに腹部を刺され出血死した模様です。」
「なるほど・・・容疑者はいるのか？」
「いえ・・・全く・・・」
そこまで聞くとオレは部屋を見渡す。
部屋は男の一人暮しを想像させないくらい綺麗で、被害者の性格を表していた。
「そういえばカーペットに奇妙な事が書いてありましたね」
「本当か？どこだ？」
「残念ながらもう署に行ったんですが、たしか・・・」
そう新米は言うと携帯で字を打ち始めた。
カーペットには
「たヽい□｜⊂｜」
と似たような感じの事が書いてあったらしい。
「新米これはどういう意味だ？」
「その・・・皆意味がわからなくて・・・」
「新米・・・これはあくまでも勝手な推測なのだが・・・・・」
三日後、オレの推理で犯人が逮捕された。
事件はすぐに幕を閉じた。
「本田刑事、結局ダイイングメッセージはどういう意味だったんですか？」
「おぉ、新米。まぁ、あれだ。被害者の気持ちになってみろ？オレも昔腹をさされたことがあるんだが、その痛みはたまったもんじゃない。そんななかで書いた文字だ、当然ぐちゃぐちゃだろ？」
「えぇ・・・まぁ」
「だから、（た）と（ヽ）でta。（い）でll。まとめて、tall。（□｜⊂｜）でoldかなぁと思ってな。さらに英語を考慮して外人かなぁと。んでまとめると、（背の高い年老いた外人）てわけだ。被害者は英語が得意で会社でも評判だったらしいしな。だから死に間際、日本語でなくても不思議ではない。それに、お前が見してくれたのは携帯だから確信はなかったが、署に帰ってみるともっとそれらしく見えたしな。」
「なるほど・・・」
〜end〜