受話器のむこうとこちらにひそむもの-4
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気がついたら私は、真っ暗になった家の中でソファーにしがみついていた。
たぶんトシスケさんの家族が帰って来たんだろう。あまりに荒々しい声に驚いて、私は赤電話を切ると一目散に逃げてしまった。
10円玉を持って帰ってくるのも忘れた。
(大丈夫よね…… 逆探知されたって、赤電話だもん。私だってわかるはずないよね。)
自分にそう言い聞かせて、胸のドキドキをおさめていると、
ジリリリリリリリリンッ! ジリリリリリリリリンッ!
ジリリリリリリリリンッ!
暗い家の中に黒電話のベルが鳴り響いた。
(あの女の人、うちをつきとめたのかしら?)
ジリリリリリリリリンッ! ジリリリリリリリリンッ!
私は、いろんな言い訳を用意しながら受話器をとった。
「はい……」
「お〜い、 みね子ちゃ〜ん!」
受話器から、ママの声が届いて来た。
「手術無事終わったよ〜! でもね……」
「でも……どうしたの?」
「親類をみんな集めておくように、なんて言われたらしいから あわてて駆けつけたけど、勘違いだったらしいのね。
そんなにたいした手術じゃなかったのよ。」
「そうだったの…… でも、よかったね。」
「うん、よかったわ。安心した。
今夜は泊まるけど、明日早く帰るからね。」
「うん、早く帰って来てね……」
ママからの電話を切って、ホッとした私は、暗い部屋の中にあお向けに寝て、パンツを脱いだ。
そして何のためらいもなく、「チツ」を指でいじりはじめた。
トシスケさんとの電話では、電話ボックスでオナニーしてたことになってたけど、本当はエッチな事を言うだけでせいいっぱいだった私。
ママからの電話で安心した私は、さっきまでのおびえはどこへやら。今夜はパパもママも帰らないという好条件を得て、思いきりオナニーを始めた。
「トシスケさん……ヌード、おチンチン、オナニー、セックス、ポルノ…… トシスケさん……ヌード、おチンチン、オナニー、セックス、ポルノ……」
私には オナニーの時に快感を高めるヌード写真や大人のマンガなどは持ち合わせがなかった。
トシスケさんの声を思い出しながら、イヤらしい言葉を何度も声に出し続けて、自分を淫らな女の子にしていった。
(また、誰かの名前と電話番号を知れたらいいな……)
【バイバ〜イ】