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デザートは甘いリンゴで
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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2.交際-3



 その年の暮れ、約束していたクリスマス・イブのデートが増岡によって三日前にキャンセルされた。
 「ごめん、イブの日、会えなくなった」
 増岡の声は沈んでいた。
 「え? どうしたの?」
 「姉が亡くなったんだ……」
 美穂は絶句した。スマホを持つ手がじっとりと汗ばんだ。
 「ごめん。僕も楽しみにしていたんだけど……」
 「お姉さんが……。お幾つだったんですか?」
 「僕の八つ上。くも膜下出血で突然……」
 「そう……ですか。あたしは大丈夫。貴男もいろいろと大変でしょうけど……」
 美穂はこんな時に電話の向こうの大切な人にかける適当な言葉が出てこないことがひどくもどかしかった。
 「ほんとにごめん。この埋め合わせはちゃんとするから」
 「気にしないでください。それよりあたしにできること、ありませんか?」
 「いや、大丈夫。気遣いは無用です。葬儀は親族だけで済ますことにしたから」
 いつもより明らかに言葉少なだった。そして通話は増岡から先に切られた。

 年が明けて二月の声を聞くようになった頃、ようやく美穂は増岡と会うことができた。
 『シンチョコ』のメイン・エントランスの前には、バレンタインデーのセールを予告する大きなアーチ型の看板が立てられていた。増岡はドアを開け、美穂の手を取って店内に足を踏み入れた。
 増岡は美穂が厚手のライトグリーンのコートを脱ぐのに手を貸して、喫茶スペースの隅のハンガーにそれを掛けている時、店主ケネスの妻マユミが水の入ったグラスを二つ運んできて、窓際の席に先に座っていた美穂のテーブルに置いた。
 「いらっしゃい。デート?」
 「あ、マユミ。うん」
 すぐに増岡もやって来て美穂に向かい合って座った。
 「こんにちは、増岡先生」
 「こんにちは。おじゃまします」
 マユミはにこにこ笑いながら訊いた。「何になさいますか?」
 増岡はコーヒーを、と言った。
 「あたしもそれで」美穂も言った。


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