第7話-1
気がついたときには、諸橋はいなくなっており、数人の男が沙耶香の身体を貪っていた。
恐らく諸橋に出されたのであろうアナルからは大量のザーメンが溢れており、直腸を満たす液体を排出したい欲求に襲われるも。
既に別の男根が出入りしており、口と膣のピストンの感覚と合わせてそれもわからなくなった。
いつの間にかスカートだけしか身に纏っていないようであったが。
ところどころ体液で汚れているのがぼんやりと気になった。
そうしてオーガズムに時々反応する以外は動かない沙耶香の上を数十人の男たちが通り過ぎていき。
数時間後には性臭で充満した部屋に一人、死んだように動かない沙耶香の身体だけがあった。
最後の男が出て行きどれだけ経ったのか。
ゆっくりと身体を起こそうとするも、ついた腕がぶるぶると震えて上手くできない。
それでも徐々に機能を回復していく肉体を叱咤して、部屋にあったティッシュを大量に使い身体中を拭った。
最後まで着ていたスカートには白く体液の残滓が残されており、その箇所を水で濡らしてから拭って汚れを落とす。
そうして時間をかけて牛歩の如く身支度を整える。
最後にストッキングを履いたときにはやっと終わったとその場で倒れこみそうになった。
とっくに限界を迎えている身体を引きずり、部屋から出る。
最初に諸橋たちと邂逅した店内には誰もおらず、屋外にバイクの音とライトの光りが溢れていることに気づいた。
表にでると、諸橋のグループであろう数百人の人間がたむろしている。
その中をゆっくりと歩を進める。
自然と注目が自分に集まるのがわかる。
何があったのか知っているのだろう、見物人の顔には嘲笑と軽蔑、そして卑猥な色が浮かんでいた。
可能な限り取り繕いはしたが、沙耶香が如何に激しい陵辱を受けたかは傍目にも明らかであった。
おぼつかない足取り、震える膝、スカートに残る痕跡、わずかに乱れた髪、疲れやつれた表情。
そんな己を晒しながら、好奇の視線に包まれて、バイクの爆音が溢れる駐車場を出口に向かって歩いていく。
そして出口の前。
諸橋がバイクに跨り、立ちふさがっている。
「ずいぶんおとなしくなったじゃねえか。どうだ、もう勘弁してほしいか? 土下座して泣いて許しを請えばお前はもう来なくていいぜ。ただ前田の妹のことはしらねぇけどな」
立ち止まり、何とか背筋を伸ばす。
両手を下げたまま強くこぶしを握り締める。
ごくんと唾を飲み込み、からからに渇いた喉を潤した。
「……はぁ? 誰に言ってんだよ。想像通り、テメーらは大したことなかったよ。あんくらいで調子んのんなって」
どれだけの惨状だろうと瞳にだけは気概の炎を揺らめかして言い放つ。
しばしの沈黙。
沙耶香にはわかりようもなかったが、周りの側近たちは諸橋の様子に珍しい反応を感じる。
めったに感情を出さない凶悪な男が呆れたようにも感じ入っているようにも見えた。
「……まだ可愛がりがたらねーみてぇだな。東条。お前が自分で選んだことだ、後悔すんなよ。また呼び出したらすぐにこいや」
「……」
無言で横を通っていく沙耶香。
その背中に声がかかった。
「途中でぶっ倒れるなよ。可愛くお願いできんなら、送ってやらねーこともねえぞ?」
振り返りもせずに敵愾心に満ちた声で答える。
「いらねーよ」
ろくに動かない足を引きづりながら去っていった。
家に辿り着くまでの道中、腰を下ろしそうになるのを必死で抑えて歩を進める。
一度座り込んでしまったらもう動けまい。
今だ先は遠い。
だがこれが愛する男のためとはいえ、その当人を裏切った罰であると己を叱咤した。
この道行きこそ。
一度も結ばれること無くその宿敵に身体を捧げてしまった沙耶香から悠一への贖罪に他ならなかった。