復帰、そして新たなる波紋-5
「まぁ、そうなのー。」
「あぁ、親父の奴見違えたなーって。」
自室のテーブルにお茶ともなかにカステラが広がっており、場の空気はとても和やかなものとなっていて。
「でも良いの?青森のお兄さん達は。」
「兄貴達なら大丈夫だよ、俺がこっちに来ると聞いたら「俺たちの事なら気を遣わなくていいのに、でもお前が決めたなら、親父たちには宜しく言っといてくれ」って。」
「それは良かった、お父さんたちとは上手くやってる?」
彼の父親のイメージと言ったら飲んだくれでろくに父親らしい事など何一つしないイメージしかないけど。
「大丈夫、今は発電所で真面目に働いていて。」
「まぁ、びりびりびりぃーって♪」
「あっはは相変わらずだね、そうだよ、毎日18時くらいには戻って来て奥さんまぁ俺の新しい母さんだけど、彼女の料理を食べてさ。」
「へぇー、お休みの日は?」
「普段はゆっくりしてるけど、そういや此間キャンプに連れてってくれたな。」
「あれからもうお酒は一滴も口にしてないよね。」
「いや、夜とか普通に飲むけど。」
「えっ!駄目じゃん。」
「駄目じゃないだろ、そんな酒そのものを目の敵にしなくたって大麻じゃあるまいし。」
そっか、でも相手が相手だった訳だし。
「まるで普通のお父さんみたいだねー♪」
「おいおい、何蓮みたいな事言ってんだよ、まぁでも楽しくやってるさ。」
「へぇー、良かった良かった。」
彼と話しているうちにお爺ちゃんが亡くなった事にいつまでもくよくよしていた自分が嘘みたいに思えてきた。
「…所で、さぁー。」
「うんー?」
間を置き、お茶を一口した所で私に問う。
「風馬とはどうしてる?」
「えっ?」
不意に彼の名を口にしてきて一瞬ドキッとするも。
「え、急にどうしたの?…、別に仲良くやってるよ。」
学校祭で大好きな従兄妹の男の子が遊びに来てくれて焼き餅を焼いたり、その学校祭でメイド服を着せられて心身ともに参ってた事を話し、それに。
「折角心配して来てくれたのに私ったら怒鳴って追い返して。」
「……。」
「!いっけなぁーい、彼にメールするの忘れてた。」
と、私がいそいそとケータイを取り出そうとすると。
「なぁ、ちょっと買い物に付き合ってくれないか?」
「え?」
「ちょっとお使い頼まれてんだ、けど肉、野菜、卵、ってざっくりしてて具体的に何をどう買えばいいのやら。」
「…良いけど、ちょっと待って彼にメールを打ってから。」
「急いで!早くしないとタイムセール終わっちゃう、若しくは売り切れて。」
「わっ、ちょっ!」
送信ボタンも押し損ね、彼は私の腕を半ば強引に掴み、スーパーへと急かした。
「待って、佐伯君!」
「………。」