第一話:不安-3
お昼も終り、いよいよ授業参観の時間がやって来ましたが、やって来た母親達の人数は、私が想像して居たより少なく六人でした。その中には、家の母と、その隣で家の母と談笑する健二の母の姿があり、健二が驚いた表情をしていました。今の授業参観の事はよくは知りませんが、私が小学生の頃は、まだ着物とかも着て来る母親も居ましたが、私が高校の頃になると、着物を着てくる母親は居ませんでした。それでも、普段着ないような服を、この時とばかり着ていたような気がします。授業参観にやって来た六人の母親達は、ワンピースやスーツを着ていました。家の母と健二の母以外の他の母親達はと言えば・・・
ショートヘアーで眼鏡を掛けた、どこか教育ママっぽい雰囲気を醸し出した痩せ形の佐藤の母・・・
この六人の中で一番若く、20代後半に見えなくも無い顔立ちで、パーマを掛けた髪を金髪に染めて、どこか目付きが悪い、元ヤンキーのような黒岩の母・・・
健二の母以上の爆乳で巨尻だが、括れがなくトドのような体型をして、太っている武藤の母・・・
そして、優しそうな美人で、中々スタイルが良く、私も思わず見取れた中野の母・・・
その六人の母親達が、後ろから私達の教室に入り、立って居ました。安藤は、私達に話し掛け、
「じゃあ、君達は先に旧校舎の理科室に移動して、先生はご父兄の方をご案内するから」
こうして、先ず生徒である私達が移動しました。チラリと母を見ると、母は小さく私に手を振りました。私は、健二と並んで歩きながら、
「健二の母ちゃんも来てたじゃん?」
「ああ、驚いた・・・朝は何も言って無かったんだけどなぁ?」
私達は、そんな話をしながら旧校舎に入ると、三年一組の生徒達が、授業中だと言うのに、入り口に群がって居ました。その中で、一際鋭い眼光を放つ180Cm以上はありそうな、体格の良い短い金髪の先輩の姿が、私には印象に残りました。直感的に、この人はヤバイと感じるような感じで、どこか陰湿そうな気がしました。
「健二、今の人見た?」
「バカ、あの人をあんまりジロジロ見るんじゃないぞ?あの人が・・・ここの理事長の息子で、鬼塚さんって言うんだ」
「あ、あの人が・・・理事長の息子!?」
私は益々不安になるも、健二と共に旧校舎の理科室に入りました。授業で使うからか、掃除はしてあったようでしたが、機具を置いている倉庫は、ガラスが無く、中が丸見えでした。
私達が席に着いて3分後くらいに、母親達が担任に連れられてやって来ました。正直、私はこの日の実験内容を全く覚えて居ません。母の事が気掛かりで、全く頭に入っていませんでした・・・