第一話:不安-2
その日はそれで終わりましたが、私は母にどういう風に話せば良いのか困惑しました。あくまで健二の話は聞いた話であり、真実かどうかは、今の私に確かめる術は無いのですから、ですが、私はある事を思い出し、背筋がゾッとしました。
(健二は、入学式とか授業参観に来た母親を、先輩達は物色するとか言ってたよなぁ・・・)
それは家の母も、入学式の時に目を付けられている可能性もあるのではないか、そう思ったのです。
私は、それとなく母を来させないようにしようと、母と二人きりの時、学校の話題を出しました。
「ウチの学校、不良多くてさぁ・・・何か女に餓えてて、熟女にも興味を持ってるのも多いらしいし、お母さん、来るの止めた方が良いんじゃないの?」
「あら、康ちゃんみたいねぇ?」
「エッ!?」
「エッチな本、ベッドの下に隠してたでしょう?年頃だから構わないけど、もっと若い子の本でオチンチン立てなさい」
こういう所は、母は天然でした。母は、オチンチンとかオマンコと言う言葉を、平然と口にしたりしていました。友達の居る前でも口にした事がありましたので、友達が興奮していた事もありました。
「心配してくれてありがとう、でも大丈夫よ」
母は、こんなおばさんに欲情などしないと、高を括っていたのでしょうが、私は不安で堪りませんでした・・・
授業参観当日・・・
私達が授業参観を行うのは、担任の授業である理科の授業でした。担任の名前は安藤と言い、レンズが厚い眼鏡を掛け、おばさんパーマーをしたような風貌で、ヒョロヒョロした五十ぐらいの痩せ男で独身でした。ホームルームの時、安藤の口から信じられない言葉を聞かされました。
「エェ、授業参観だが、新校舎の理科室は、昨日科学部が実験をしてそのままの状態だから、使用出来ない状況だ。よって、旧校舎の理科室を使う事になった」
この話に、一部の生徒がざわついた。無論私も激しく動揺しました。何とか母を来させないようにしなければ、そう思って、休憩時間に何度か電話を入れるも、母は電話に出ませんでした。
(どうする!?)
そう思っても、私にはどうする事も出来ませんでした・・・