隣のお姉さんは、誰と-5
俺のことを、待ってくれている。
隼人は、そう考えていた。
長年の付き合いから、それが決してうぬぼれや勘違いではないという自信もあった。
いつになるかは、分からない。
だが、自分と美晴には、確かに約束された未来がある。
そう信じて、隼人は美晴と釣り合う男になるために日々を費やしてきたのだ。
その美晴が、突然どこの誰とも知らない中年のおっさんと結婚するという。
(そういえば……)
さっき、お隣の玄関前に見たことのない黒塗りの高級車が停められていた。
もしかしたら、あれが――。
「……くそっ!」
隼人が階段を駆け上がって、二階の自室に転がり込んだ。
窓を開ける。
六月の爽やかな風が吹き込んだ。
向かいの窓も開いている。
カーテンがたなびいて、中が見えた。
久しく入っていないが、そこはいつも通り、見慣れた美晴の部屋だった。
「ひひ、うっひひ」
「い、いやあぁっ!」
ただ一つ、醜いおっさんが美晴をベッドの上に押し倒している点を除けば。
「!!」
隼人は反射的に身を伏せ、窓の下の壁にへばりついた。それからこっそり、目から上だけを
浮上させ、食い入るように隣の様子を見つめる。
美晴のベッドは窓と並行するように置かれているため、アングルは横からだった。
風に揺られたせいか、カーテンは位置がずれてあまり用をなしていない。元々の距離が近い
ため、互いに窓の開いたこの状態なら会話は完全に丸聞こえだ。
「ひっひ。どうせお前はワシに逆らえんのだ。いいか、これから徹底的にかわいがってやる。
ワシ好みのいやらしいメス豚になるまでとことん仕込んでやるからな。覚悟しておけ」
(なっ……!)
隼人の耳にいきなり飛び込んできたのは、中年オヤジのおぞましいだみ声。
「おお、おお。みっちり肉の詰まったいい脚をしているな。どれ」
唾液をたっぷり含んだ口を半開きにしながら、岩倉が美晴の長いスカートに潜り込んだ。
「ひっひ、絶景絶景。まあ本当なら十代の方がいいんだがな。二十歳を過ぎるととうが立って
少し味が落ちる。だから何年も前から声をかけておったのに、あのぼんくらめが、生意気にも
このワシ相手に出し惜しみなんぞしおって」
くんくんと鼻を鳴らし、匂いをかぐ。
「でもまあ、これくらいならいい線だろ」
深呼吸を何度も繰り返した。
「ん……あっ」
秘部に生温い風が当たるたび、美晴がくすぐったそうにもじもじと身体をよじる。