傷つけ合いな学校祭-8
未だ賑わいが絶えず、人びとが歩いている中、一人恥じらいもなく私の前で土下座をする男が居た。
「………。」
「すみませんでしたー!」
「……。」
怒りが収まらない私達は無言で必死に頭を下げる蓮を冷ややかな目で見つめる。
「本当です、後ちょっとしたらちゃんと係員としての役目を。」
「…信じない。」
「いや、嘘じゃな、嘘じゃ、ありません。」
なんで敬語なんだよ。
「想像出来ないなー、あのままずっとからかい続けてそうだったし。」
「う、そっそれは。」
あの後結局どうにか運よくやっとこさの想いであたるが出口を見つけてくれたからどうにかなったものの。
「蓮ー、お前なぁー仕事はちゃんとしろよなー、物事限度ってのがあるだろうが。」
「あたるー。」
共に被害を受けた彼もクレームをつける。
「にしてもどうこう事だよー、またこっちに戻るって、早乙女さんとも別れたって。」
「あーいやそれは。」
「今は良いでしょ!何都合よく話を替えようとしてんのよ、この人でなし!」
「っ!すみません、すみません!」
そんなにこの私が怖いか?いや違うきっと私が例の巨大迷路で泣いたから、いや正確には泣いては居ないけどね。
「でも、出口まで案内しようと思ったのは本当です、断じてずっとあの迷路に閉じ込めようだ何て事は。」
「もういいって。」
「いいえ、そういう訳には参りませぬ。」
「じゃなくて敬語っ!私が恐喝でもしてるみたいでしょーが!」
「っ!…はい、あーうん。分かったよ巴ちゃん。」
「……。」
こいつ、めんどくさっ!!
「する訳ないよ、大事な恋人、それに久々の親友にそんな事。」
「……。」
「あたるとの再会につい歯止めが利かなくなってしまって。」
「蓮…。」
あたるが戻って来て一番嬉しいのは他でもない彼なんだ、メールで私と若葉にあたるが来る事を告げた時の嬉しそうな顔、学校祭直前もずっと彼の話をしてたな。
「それに、からかいたくもんなんだよー、それが大好きな子なら尚更。」
「っ!」
大好き、という言葉に胸が弓矢で刺されるようにキュンとする。
「でも、やり過ぎだよね、ホントゴメン…。」
「………。」
改めて頭を下げる彼。
……。
まぁ元々コイツはこういう奴だし、それは恋人である私が一番知ってる訳だし。
「巴、どうする?」
「……。」
未だ力んでる彼。
「……、そういや向こうの屋台でクレープ売ってたな、あれ食べたいなぁー。」
「っ!……。」
「蓮。」
「よし今すぐ買いに行こう!」
「言っとくけど300円のじゃないから、500円の、一番高い奴。」
「うひっ?」
「それならその隣にたこ焼きも売ってたな。」
「うひうひっ!あたるまで!」
「あーあぁ、例の迷路で迷い過ぎて今軽い閉所恐怖症気味なんですけどー。」
「はいはい買います買いますよー。」
「ふふっ♪」
全く、仕方ない人ね。