傷つけ合いな学校祭-10
思いの他、風馬君はすぐに見つかった。
「………。」
ベンチで一人ポツンと腰を下ろしていた。
「風馬、君。」
「……。」
返事もなく一度こっちを見るもとても寂しそうでそれでいて悔しそうな顔。
「あのね、風馬君違うの、これは。」
「良いよ別に、アレは浮気とは違う、ただの親戚同士なんだって。」
「それは。」
彼なりに葛藤していたんだ、自分が傷つかないように冷静になって。
「御免なさい。」
「何謝ってるの?君なにも悪い事してないでしょ。」
「ならどうして君は私達についていかなかったの?」
「っ!それは。」
ゆっくりとした足取りで彼の隣へ座り、一兄の優しい私の従兄妹を語る。
「彼はね、引っ込み思案だった私に良く声を掛けてくれたの。」
「……、ドーナツ好きも彼の影響だって。」
「うん!彼と他愛もない話をしたり、時にはからかわれ過ぎて叔父さんが彼に雷を落としたりもして。」
「……。」
「今でこそお母さんがいるけどお父さんは事故で召されて身近にいたのはお爺ちゃんだけだったから、嬉しかったのよ、数少ない親戚でさ。」
「若葉、ちゃん。」
「でも!だからって駄目だよね、君という人が近くに居ながらこんな事。」
「僕は、別に。」
「嘘は駄目、顔に描いてるよ。」
「っ!」
顔を赤くし咄嗟に手の平に頬を触れる。
「だから風馬君。」
「ん、……っ!」
けじめ、って訳じゃないけど彼の頬に口づけをする。
「こんなんで許してもらうつもりはないけど、うん?」
彼は立ち上がり、手を差し出す。
「もういいよこの話は、ほらっ!行こう!まだ祭りは終わってない!」
「風馬、君。…うんっ!」
私は彼の手に引かれ、ようやく本来求めていた幸せな時間を味わう事となった。