サボり魔と委員長の屋上-2
「なぁ、広見」
「何かね、薫嬢」
「アタシらの仲、いつまで秘密にしとこか」
うん、それは僕も最近考えてた。とりあえず、僕らの仲が公になれば、教師たちが良い顔しないだろうな。かたや成績優秀な委員長。もう片方は、不真面目な遅刻サボりの常習犯。
世間的にはミスマッチ。
「僕は、秘密にしてても良いと思うんだけどね。薫が公表したいのなら、反対しないよ」
「……もちょっと秘密にしとこか。二人だけの甘い秘密って感じでええやん」
照れ隠しで笑みを浮かべる彼女は可愛かった。
「さて、行こか」
「……どこに?」
眼鏡をかけ直して彼女は僕に言った。僕は聞き返した。彼女はまたため息をついた。
「ため息は幸せを逃がすんだよ、薫」
「広見がいたら、逃げへん」
そう言ってから彼女はまたも僕のネクタイを掴んで引っ張る。
「ほら、立ちぃ。教室戻るで。このままやったら、アタシまでサボりになる」
仕方ない。ここは薫の委員長としての威厳を保つ為に協力するか。いいかげん、首が絞まって苦しいしね。
立つと、薫はすでにはしごを降り始めていた。僕は屋上に飛び降りる。
「さて、戻ろ」
「とりあえずその前に薫、言っておく事がある」
ドアに手をかけようとした薫を止める。これは言っておかなければ、僕の命に関わる。
「なに?」
「ネクタイ引っ張るのは、勘弁してくれないか。首が絞まる」
彼女は三度、僕のネクタイを掴んでいた。薫、逃げないって。
そう言うと、数瞬考える顔をした薫は、にぃっと笑った。
あ、これは僕にしか見せない悪巧みした時の顔だ。
そう思ってると、彼女が手と腕に力を入れたのがわかった。うん、さてどうするつもり………!?
「……こういう事する為ならええ?」
薫の唇が僕のそれから離れてから、彼女はちょっと赤くなって尋ねてきた。
うん、そう問われたら、答え方は一つだけだ。
「大歓迎だね」
ますます赤くなった薫の後ろのドアを僕は開けた。彼女を先に通し、僕が通る。
屋上のドアは機構に従って、重々しくその身で入り口を閉めた。
とりあえず、明日も晴れなら良いなぁ。そうだったら、また薫とサボれるしね。
END