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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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車両の前哨戦-6

「ちっ!」

舌打ちをした雄一は、そのまま身体を引いて、今度は脚を抱える田川を庇うように身構えた。雄一は目で啓太を牽制しながら田川に声をかけた。

「お前をサポートする余裕はないぞ。いけるか?」

相手にもばれているから今さら隠しても仕方がない。雄一は痛む腕を押さえながら、田川に正直に伝えた。

「ああ、大丈夫だ。お前みたいに骨は脆くない」

遅れて身構えた田川が雄一の問いに軽い口調で返したが、その顔には脂汗が浮いていた。

「さすがだな。頼りにしてる」

雄一は、負けん気の強い友人の憎まれ口を、素直に聞き入れることにした。

啓太が雄一を牽制する横で、浅見も腹を押さえながらゆっくりと立ち上がった。

「くそガキが、調子にのりやがって!」

組を破門されてからの浅見の沸き立つ思いは復讐。雄一達を同じ目に遭わせ、この切欠を作った優子をボロ布になるまで犯し続けることだった。

前回は、優男の見た目に油断しただけで、自分と啓太が本気を出せば負けるとは思わなかった。油断さえしなければ、思いを果たすのは簡単なはず。案の定、雄一の腕は簡単に折ることができた。しかし、それ以降が進まないことに、浅見は苛立っていた。

「こんな雑魚はとっとと半殺しにして、あの女を犯しにいくぞ!」

浅見が促したが、それでも啓太は直ぐに仕掛けようとはしなかった。浅見と連るむ以前、啓太は真剣にボクシングに打ち込んだ時期もあった。啓太は雄一を観察しながら、その頃の感覚を呼び起こそうとしていた。

田川が登場するまでは数の優位もあったし、尚且つ、雄一が手傷を負っていたから、啓太は躊躇することなく攻撃を仕掛けた。しかし、そんな優位の中でも、ことごとく攻撃をかわされた挙げ句に、一瞬の隙を突いて肘を当てられてしまった。

(こいつの、へらへらした態度は要注意だ)

田川の登場で数の優位が崩れ、慎重にならざるを得ないことと、それに、立ち上がった浅見も、腹のダメージからまだ回復していなかったこともあり、慎重になった啓太は攻めあぐねていた。

また、手傷を負った雄一の方も、自分から仕掛けるよりもカウンター狙いで、相手の攻撃を待っていた。

そんな4人が醸し出す緊迫する空気の中、新たなる男が車輌に入ってきた。

「Hey! 」

その場の空気を破るように、その男は片手を挙げて、軽い調子で声をかけてきた。

「なんだ?」

雄一が訝しんだのも無理はなかった。入ってきた男が白人だったからだ。一瞬、雄一は無関係な部外者が迷い混んできたと思ってしまった。

「You look fun. (楽しそうだな)」

雄一のその勘違いを助長するかのように、その白人は軽い調子で続けたが、雄一はそれが勘違いだったと直ぐに気付いた。その白人がぐったりとした男の襟元を掴んで、引き摺っていたからだ。その光景は白人の軽い口調にそぐわず、かなりの異様さを漂わせていた。

雄一は襟元を掴まれたまま、ぐったりと動かない男を注視した。すると見る見る内に、雄一の目が驚愕の色を為して見開かれていった。

「乾!!」

雄一は動かない友人に向かって叫んだ。その友人である乾の顔は腫れ上がり、雄一の叫びにも反応はなかった。

「コノ人、楽シメナカッタネ。次ハ誰デスカ?」

片言で言った白人は、襟元を掴んだ乾の身体を強引に雄一の前に引き摺り出すと、心から嬉しそうな笑みを浮かべて、ドサリと投げ出した。

星司が危惧した男、ジョンは日本に来てよかったと思っていた。強さが高じて暴力沙汰を起こしたジョンは、格闘界を追放されて、絵に描いたように荒れ始め、毎夜地元の不良連中とたむろするようになった。

そんなある日、対向グループの一人を意識不明の重体にさせてしまい、警察の捜査が身近に及んできた。そんな時に声をかけたのが、幸田美咲だった。

「If there is a problem,  stay in Japan for   while. (ほとぼりが冷めるまで、日本に居なよ)」

ジョンは渡りに舟で、美咲のその誘いに乗った。


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