美術の授業-3
着いちゃった。
連れられてきちゃった。
美奈子の家は普通だった。
台所にいたお母さんに挨拶して、二階の美奈子の部屋に入る。まあ、普通の部屋だった。
「緊張してるの? 女同士なのに」
緊張しないほうがおかしい。
「私が美大目指していることは、親も知ってるよ。こんな本も買ってくれる」
彼女が本棚から取り出した大型本──表紙が裸の女性の写真。
中身は、すべて全裸の女性の写真だった。ヌード・ポーズ・ブック。その名の通り、ありとあらゆるポーズをとっていた。
四つん這いなんて、着衣でも恥ずかしいのに、このお姉さん、ハダカで、平気なんだ。
ダメだよ、中学生がこんな本持ってちゃあ。
「大丈夫、パンツは穿いてていいから」
また言った。
◆
「手を組んで、上に突き上げる。ちょっと腰をひねって」
言われた通りにする。
コンテが走る。
「そのまま、後ろを向いて」
回れ、右。
「いい。すごくいい。……でも、これだけはパンツが無いほうがいい」
あー。
うすうす予感はしていた。
美奈子が本当の芸術家なら、どこまでも純粋な表現を追求するはずで……。
コンテは動かない。
わかったよ。
私は、ショーツに手をかけ、一気に降ろした。
「ありがとう、詩織」
コンテが走る音がした。
◆
「お疲れ様」
美奈子が一階から持ってきたオレンジジュースを飲んだ。
「おいしい」
私はまだショーツも穿いてない。
それほど、全裸が気持ちよかったから。
「夕食、詩織の分まであるって。モデル料として食べてって」
「うん」
「部屋を出るときはパンツ穿いてよ」
「パンツだけでいいの?」
「かまわないけど」
どんな家だ。
─────────
(終わり)