感謝の裸身-3
何度でも言う。優しい人だった。
私を全裸にしたあと、ずっと髪を撫でてくれる。
新鮮だった。
全身、手や舌で開発され尽くしたと思っていたが、まだ愛撫されてないところがあったのだ。
でも、唇は奪わなかった。それは、どちらの貞操のためなのか。
「ああ、ああ、ああ」
ため息のような声が出る。
彼は下着一枚残していた。
やりたいわけじゃない、いつでもやめていいというメッセージかもしれないが、
すでに私を全裸にして、たくみな愛撫を加えていることとは矛盾している。
「ううっ、ふっ、ああん」
乳房を覆ってきた。
「ああん、あ、あ」
ついに、彼の手が下腹部へきた。
滑らかな愛撫。
背徳感を完全に失わせるほどの。
「あなたも、脱いで、入れてください
」
はしたないリクエストだった。
押し入ってくる。
彼のものしか知らない私の中に。
比べてはいけないと思うが、
今の彼の方が大きいように思えた。
体位は背面騎上位。
言うまでもなく、仰向けに寝た彼にお尻を向けて座りこむ、恥ずかしい体位だ。
顔が見えないのは、幸か不幸か。
顔を見られないから、遠慮なく、大胆になれるということでもあった。
それにしても、エッチ。
自分からお尻を上下させるなんて、あさましい動物のようだった。
「ああっああっ、ぐふっ、ぐふっ、あん、ああっ」
「初めてなんだね、詩織さんは」
「はい。ああ、ああ」
処女という意味ではなく、初めての体位ということだった。
「ああ、ああ、うん、あ、あ、あ、あーん」
彼が、私の腰を持ち上げた。
引き抜かれた一瞬後、放出した。
◆
彼は連絡先を教えなかった。
それでよかった。
長いハグをして、今度こそ、彼は去った。
私は、その夜、久しぶりに自分の指で自分を慰めた。
もちろん、全裸になって。
──────────
(終わり)