010.『見せしめ(1)』-1
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秋尾 俶伸
《クッソっ、弥重……! 弥重っ……!》
都丸 弥重
《俶くん……っ、こわいよ…………っ!》
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八木沼 由絵
「うそ!? 秋尾くんと、弥重ちゃんだよっ、
…………勝平っ」
千景 勝平
「ああ、ああっ!」
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秋尾 俶伸
《弥重……、大丈夫だっ、すぐに俺が!》
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本堂 空太
「………………っ」
(秋尾 俶伸(あきお よしのぶ)。それに、都丸 弥重(とまる やえ)。
この二人も、元クラスメイトで、中3の頃からお似合いのカップルだ。
秋尾は、勝平と同じような非行少年で、よくつるんでいたし、今もかなり仲が良いはずだ。
背は高くないけど筋肉質な体型で、たぶん、ケンカも強い。
けど本人は、あまり精力がないと言うか、無気力でぼーっとしてる印象が強い。
少なくとも同じクラスだった時は、問題を起こすこともなかったし、はしゃいでるイメージとかはあまりない。
けど、どこか存在感があるんだ。黙っていても目立つタイプで、その点は勝平と似ていたんだと思う。
そんな秋尾だけど、彼女である都丸に関してだけは別だったみたいだ。
熱心で、一途で、一生懸命で、全力で支えて、心の底から思いやっていた。
だから、お似合いのカップルだったんだ――――。
都丸は、少し不思議な話し方をする女の子だ。詩人のような。
中等部時代、佐倉と仲が良かったけど、…………聞いた話によると、佐倉も都丸も、朔也のことが好きで。
同じ人を好きになってしまったばかりになんとなく、気まずくなって、中2の後半くらいからそれぞれ別のグループになって、離れた。
佐倉はその時、七瀬も所属してたクラスでも巨大な女子のグループに引き込まれたけど、都丸は保健室に入り浸ってる面々と、細々と交友してたみたいだ。
休み勝ちだったりで教室にいないことが多い友人の中で、ひとり寂しそうにしてたのを白百合が見かねて、都丸に片想いしてた秋尾をけしかけたり、二人を遊びに誘ったりして、仲を取り持ったと言うのは有名な話だった。
都丸は少しずつ明るくなったし、おかげでクラスは平和だった。卒業するまで、ずっと――――)