日常-1
直人は相変わらず卑猥な映像を点検するように眺望が照らす光に包まれながら遅い朝食を食べているところだった。
「その人はどの方かしら」
直人の朝食を作り終えたわたしはダイニングから大型スクリーンが映す最新の映像を眺めながら直人に聞いていた。
「これはね渋谷のラパン本店に勤める26歳の悪い女だよ」
「直人も十分その枠に入れるわ」と言わないであげて「そうなんだ」と適当に頷いてあげていた。映像が映す26歳の女性は同世代と思われる真面目そうな青年を部屋に招いて胸元を大きく開いたワンピースで珈琲を淹れながら魅せるように屈んて下着を露わにしていた。
「太いわね」
率直な感想だった。確かに迫力ある胸元は大きいけれど遠目に見える腰回りは明らかに太く綺麗な後脚は若干短いように映しだされていた。
「全てのオーナーの僕としては責任があるからね」
新鮮なトマトを頬張りながらグレープジャムと生ハムを挟めたトーストを掴んだ直人はめちゃくちゃな責任感でわたしに得意顔を向けていた。
「責任感ねぇ」
映像は隣に座る男に肩を掴まれ濃厚なキスを絡める二人を淡々と映しだしていた。レンズの尺度は女性の股間に迫り薄いレースの下着を様々と映しだしたところだった。
「見る度に少しづつ肥えてきてる。26歳で油断するなんて勿体ないよ」
「そうねぇ。せめて脚元は隠したほうがいいわ。胸元を武器にするには敢えてティーシャツとジーンズのほうが誤魔化しが効くわね。それにしても、それほど可愛い素顔とも思えないわね」
直人は「そうそうそう」と卑猥に股間を触られて恥らう26歳の女性を背景に屈託のない満面の笑顔でわたしに笑いかけていた。
「早く食べてくれるかしら」
大型スクリーンに映しだされた素直に感じている女性を見ながら「どこが悪い女なのかしら」と促してみた。
香ばしく焼いたトーストを頬張りながら「この人は5人の男と付き合ってるんだよ」と尺度を上げたレンズは剥き出しの濡れた下着に指を偲ばれて卑猥な液体音を音響装置が拾っていた。映像は角度を替えるように勃起したジーンズに尺度を上げてその硬さを確かめようとする厭らしい女性の指先を映しだしていた。
「5人ねぇ」
直人こそ何人点検してるのよと思いながらも美味しそうに朝食を頬張る直人を見つめながら最後の頼りをわたしに求める直人の本当の姿にささやかだけど確かな幸せを噛み締めて暮らす相変わらずな日常を過ごしているところだった。