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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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奪われた幸せ-5

手術は思ったよりも長引いて、病院に一声入れじっとしてても仕方がないので一旦家に帰る事とした私達。

夜、いや深夜に親子で自宅に帰るのを見届けたもののその表情は二人ともとてもやつれていて、見兼ねて一緒に泊まるなり私の家に誘うなり傍に居てあげようと提案するも「大丈夫、ありがとう」と笑顔で言われて、後ろ髪を引っ張られる思いだが、信じる他なく。

「大変だったね。」
「昨日は色々とありがとね伊吹さん。」

翌日学校帰りに一条君の家の居間で4人集まり。

「−閑静な住宅街で起きた殺人未遂事件!」
「−犯人は元夫!」

テレビから流れる昨夜の事件の報道。

「冷血な妻と息子に人生を台無しにされた…、これはれっきとした正義だ。」
「被告人は元妻によって精神喪失した故、無罪である。」
「はい!小鳥遊さんはとても優しくて良い人ですよ。」

またも私の神経を逆なでるような犯人、弁護士、犯人の同僚の支離滅裂な言動の数々に私は再び目が尖り出し。

「夫婦間じゃよくあることよね。」
「無罪の可能性もっ!?」

巴ちゃんが呆れてそして私の顔を見てリモコンをすっと取り出しテレビを消す。

「八重樫、さん…。」
「小鳥遊君。」

溜息を軽くつき、床に視線を落とす。

彼を父親と認め出した風馬君はそれから彼と色んなお話をしたそうだ、美術部の事、バイトの話、将来について、そして私の事…。

それらを親身になって耳を傾けて聞いてくれて、そこから色んなアドバイスをくれて、彼の休みの日はよく3人で出掛けたそうで。

それはまさに本当の父親、いやそれ以上の存在で。

この先、正式に籍を入れた後も父親として力を貸してもらい、将来私と結婚する時も色々と助けてもらう予定で、それから一段落ついたら成人もし共にお酒でも交わそうとまで思い描いていたそうで。

なのに、あんな奴によって。

もうその事を考えるのは予想、こんなの彼だって望まない。

「大丈夫だよ、彼なら。」
「そう!話からしても明確に刺せたように思えないし。」
「通りすがりの人に阻止されたなら…。」
「……。」

二人が彼の元に寄り添い励ます。

そうだよ。

彼は復帰してくれる、例え今だ吉報もなく手術成功だ、という知らせがなくたって。佐伯君にお爺ちゃん、彼らだって今のように制止の境を一時彷徨いつつも最後には必ず。

すると風馬君の着信音が鳴り、「ほら来た」「さぁでなよ」と急かし急いで出る。

「もしもし、母さん?」
「……。」

期待に満ち溢れた顔を浮かべケータイを構える彼を見つめる二人。

「……風馬。」
「母さん?…八重樫さんは…。」

期待半分に笑みを浮かべる彼、しかし電話の向こうから明るい声は聞こえず。

そして、震えた声で最も聞きたくない言葉を耳にしてしまった。


八重樫さん、………死んじゃった。



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