布団-1
ちづるは知可子との
ラインでの会話を終える。
ちづるの家のリビングで、
いつものように
食後のコーヒーを飲みながら、
目の前にいるタクミをチラリと見る。
タクミは部屋着でソファーに座り
リラックスしている様子で
テレビを見ている。
パジャマ姿のちづるも、
なんとなく
テレビドラマを一緒に見ている。
しかしふと、
知可子に言われた事を思い出す。
「、 、 、、、。」
知可子は私達の事
普通の恋人同士だと
思ってるのかなぁ
でも、 知可子は
分かってない よね
きっと
「 ぁ、私。
そろそろお布団ひいてくるね。」
「ん? うん。
ぁ、そういえばさー。」
「 ん?」
観ていたテレビドラマが
ちょうど終わり
エンドロールが流れている。
タクミは
テーブルを挟んで対面している
ちづるに話す。
「布団て、1つしかないの?」
「 え? 、、布団?」
「うん。」
「 一応、2つ。 あるよ。」
「そっか。」
「2つ、敷いた方がいいかな?」
「っ んーー、、。
そう だねぇ。
俺、結構、寝相悪いっしょ?」
「んーー?
、、、。
まぁ、、 んーーとーー。
少し。 」
「ふっ、、やっぱり?
ちづちゃんも
ゆっくり眠りたいでしょ?」
「んーー、、。 私は、
どっちでも。
、、、でも、 うん。
ちゃんと干してたし。
今日は2つ敷くね。」
「うん。」
そんな会話の後、ちづるは
寝室に行き、布団を2つ敷く。
いつも使わない方の布団に
新しいシーツを敷く。
かけ布団のカバーも新しいものだった。
布団を敷き終えると
脱衣所に行き歯を磨く。
再び寝室に戻ると、
新しいシーツの敷いてある方の
布団の中に入る。
電気を豆電球にしてあお向けになる。
タクミは、
まだリビングで
テレビを観ているようだ。
豆電球だけの暗い部屋。
布団の中でスマホを持ち、
先ほどの知可子との
ラインでの会話を開き見る。
「、 、 、 、、。」
知可子は 分かってない
タクミ君の気持ち
『結婚してって、俺 言った。』
『由佳がきたって言ったじゃん?
、、そんで手を、握られて 』
タクミ君は きっと
毎日気持ちが
揺れ動いてる
、 、、、そうだよ ね
まだ 若いんだし
そんなの 当たり前
ちづるが仰向けでぼんやりと
考えていると、タクミが寝室に来た。
タクミは、
ちづるの隣に敷いてある布団に
入りながら話す。
「早いねー。」
「ん?」
「寝るの。まだ10時だよ?」
「 あ 。 本当だ、 」
ちづるは手に持っているスマホの
時間を見る。
タクミは、
手で頭を支え起こし
ちづるの方に身体をむけて話す。
「ねぇ。
なんで、今まで布団1つだったの?」
「 え? 、、 んーーー
そういえば そうだね。」
ちづるは
布団の横にある
充電器スタンドにスマホを置く。
「俺とー、
くっついていたかったんでしょ?」
「っ あはっ
でも、、うん。
それも、あるかな〜。 」
「 も?
なんか他に理由あんの?」
「、、、ぅーーん、、。
匂いがねぇ、、。」
「 ?」
「タバコの匂いが、
少し、、してたから。」
「 え?」
「このお布団、、。
あ、でも。もうさすがに消えてた。
小まめに干してたからかなぁ。 」
「、 、、、。
旦那さん、吸う人なんだ。」
「うん。」
「、、そっ か。
旦那さん思い出すと、、。
辛くなる、とか? 」
タクミは、少し気まずそうに
ちづるにそう聞いた。
ちづるは
きょとんとしてこう答えた。