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「ゴメンな、望美。俺がもっと早く自分の大切なものに気づいていればよかったんだ」
「え?」
ビックリして目を見開いた望美に、幸太は何とか微笑んでみせる。
「お前がこんなにも俺を想ってくれていたのなら、ちゃんと美樹と別れてればよかったんだよな。俺がだらしないばかりにずっとお前に辛い思いをさせっぱなしで……本当に悪かった」
「幸太……」
「俺、決めたよ。もう、お前に辛い思いはさせない。これからは、ちゃんと恋人として大切にしていく」
そう言った幸太は、ジッと望美の顔を見つめて、そしてゆっくりと唇を重ねた。
どれほど長いキスだったのか。
ようやく二人の唇が離れると、次の瞬間に、望美はポロポロと涙をこぼしていた。
「もう、何で泣くんだよ」
呆れたように笑う幸太だけど、親指で彼女の涙を拭う仕草はとても優しかった。
「だって、嬉しかったから。本当にずっと好きだったんだから……。ずっと、ずっと、幸太の一番になりたかったんだから……」
笑おうとしてるのに、涙が邪魔をしてうまく笑えていない望美がたまらなく愛おしい。
そんな彼女の頭を優しく撫でてから、再び彼女の身体を抱き締めた。
(これからは望美だけを愛していこう)
腕の中で、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべている望美に気付かない幸太は、一人胸の中でそう誓いを立てた。
完