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人類ポニーガール化計画
【調教 官能小説】

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第10話『テラス・ホース』-4

 ふくれっ面で仕事を受け取る女史と、いつも笑顔で――ハミを噛まされてはいるけれど――爽やかに仕事を受け取る軍馬を比べ、どちらを選ぶかは決まっていた。 一週間の間というもの、持ち前のずば抜けた理解力で――普段活用する場が少ないために見逃されがちだが、軍馬の知能は、市民に比べると圧倒的に高い水準にある――女史の業務を完璧に把握した軍馬は、的確に仕事をこなし続けた。 一方の女史は、ひたすら仕事をしているフリだけで、誰からも仕事を頼まれず、ただ息をひそめて時間がすぎるのを待つしかない。 たまに誰か仕事を持ってきてくれないかと様子を伺っても、頼まれるのは軍馬ばかり、女史は誰からも眼中に入れて貰えなくなっていた。 

 アンケート結果は、アンケートをしてみるまでもなく、全員一致で軍馬を圧す。 かくして女史は『ポニー調教』に自主的に参加し、自分を一から鍛え直すことが決定した。 なお、女史が調教を経て職場に復帰するまでは、軍馬が女史の家を管理し、女史の仕事を代行する。 

 画面が切り替わる。 2人目の女性の1人暮らし用マンションに、軍馬を詰めたトランクが届いた。 搬送員に対して物怖じすることなく、女性はトランクを玄関脇に運ばせる。 『ウマには玄関で十分すぎる』という理屈で、女性は軍馬を玄関より中には入れさせない。 しかたなく搬送員はトランクを玄関に残してその場を後にした。 翌朝、皺が残る制服をつけた女性が家を出る。 ハミを咥えている点以外はこざっぱりした衣装の軍馬が女性に続く。 職場では、軍馬も女性と同様にレジに入った。 何の説明も受けていないのに、異様にレジのタイピングが早い。 袋詰めもテキパキして、お客捌きに関しては女性の3倍以上をこなしてしまう。 お客に余裕が出来ると、軍馬は店に出て品物を整頓した。 クシャッと潰れた袋を丁寧に伸ばし、乱雑に並んだ青果を整え、光の加減を調節して少しでも美味しく見えるよう気を配る。 小さい汚れを目ざとく見つけ、誰かに頼むのではなく、自分の手で清掃もこなした。 気配りの対象は店内だけではない。 トラックで搬送して荷物を棚入れする業者に対し、一々頭をさげて御礼を――ハミを噛んでいるため、笑顔で会釈するだけだが――する。 可愛らしい付箋に『いつもご苦労様です』と書いて、ソッと業者のポケットに入れる。 トラック運転席のゴミを掃除し、柔らかい香水をまいておく。 段ボールを抱えて通りやすいよう、片付けられる範囲で足元を綺麗に整頓する……。 職場に加わってから、たった1日。 雰囲気がガラッと代わり、空気まで綺麗になったよう。 終礼時、店長は軍馬を名指しした。 『女らしい細やかさが、これほど素晴らしいことを思い出させてくれてありがとう。 今日壱日、本当に気持ち良く仕事ができた。 明日は私も、自分に出来ることを一生懸命頑張ろうと思う』 そういって頭を深々と下げた。 気に入らないのは女性である。 今までは自分が場を仕切り、気の弱い店長に代わって店を回しているつもりだった。 ところが軍馬が職場に加わって、まるで自分の出番がない。 気のつかない同僚にあれこれ指示しようにも、棚卸しから掃除まで、全部軍馬に先回りされたせいで、碌に出せる指示が見つからなかった。 これじゃただの一般従業員に過ぎない――というか、ベテランでありながら一般従業員と同じ時点で、実際は『使えない』部類に入れられる。 翌日、何とか自分の立場を回復すべく女性は店内を見回るも、軍馬に刺激されたせいか、店長や同僚の動きが良い。 みなが改善点を見つけて自分から綺麗に整頓するため、店がどんどんピカピカになる。 気づけば整頓に加わっていないのは女性ただ1人で、他は何がしか出来ることを探している。 2日目もこうして幕を下ろし、女性は碌に発言できないまま帰宅した。 こうなると残り期間の流れも見えてこようというものだ。 どんどん動きがよくなる軍馬に対し、不満が溜まった膨れっ面で不愛想に接客する女性の醜さが一際目立つ。 こうして女性もまた、アンケートの結果、満場一致で軍馬に遅れをとることになった。 どのアンケートにも『女性らしさが見られず、一緒にいて息苦しい』『女らしい気配りがない』『優しくないし、可愛くもない』等々、女性に対する否定的なコメントが添えられていた。 ともあれ女性に代わって軍馬が店員を代行し、女性の『ポニー調教』が決定する。



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