揺れる保健室-2
「なんなんだよ、一体……」
三上が保健室を出て行く様子をポカンとしながら眺めていた飛坂だったが、ピシャリと保健室の戸を閉められると一気に静寂が戻った。
「なんか、三上先生わけわかんねえな」
急に静まり返った空間が気まずくて、わざと明るい声を出して飛坂は友美の方を見たが、彼女は放心したままぼんやりと天井を眺めていた。
(つか、オレの話は聞こえてなかったわけね)
苦笑いを浮かべながら、友美が寝ているベッドの横に置かれた丸いスツールに座った。
ギィッと椅子の脚が床を擦る音が響く。
(でもまあ、落ち着いたっぽいな)
さっきの友美は、本当にヤバイと感じた。
顔が真っ赤になって、苦しそうに顔を歪め、身を縮こませて。
このまま彼女が倒れてしまうんではないかと思うと、身体が勝手に動いて。
すると突然、飛坂は正気に戻ったように身体がビクッと強張ったのである。
(もしかして、オレ、結構大胆なことをしてしまったんでは!?)
あの時は必死だったとは言え、友美の肩を掴んで教室を出た飛坂。
その時のクラスメイトの好奇な視線は、確かに視界の端に映っていた。
それを思い出すと、体中から汗が吹き出し始めて来たのである。
そして、飛坂は熱くなる頬を両手で押さえては懸念を抱かずにはいられなくなった。
きっと、オレの気持ちはクラス中にバレてしまったに違いない。それだけじゃない、もしかしたら今目の前で横になっている相馬にも……、と。
飛坂はそろそろと友美の様子を伺おうと、視線だけを彼女に移した。