揺れる保健室-10
◇
頭の中に、奥歯の噛み締める音が鳴り響く。
今、芦屋の胸の中は嫉妬の炎が燃え盛っていた。
調教馬に与えるムチのつもりで、与えたローターの刺激。
友美は芦屋のものである、そう身体に言い聞かせるつもりだったのに。
それは逆に、友美の理性を奪う結果となってしまった。
「ああっ、ああっ……」
息を潜めれば、友美の嬌声が微かに廊下にまで響いてくる。
あれから結構な時間が過ぎた。
中の様子は窺うことは出来ないけれど、友美のリズミカルな喘ぎから察するに、飛坂と一つになって抱き合っているに違いない。
今朝、体育教官室でセックスをした時の友美の顔が浮かぶ。
快楽のあまり涙を流しながら、何度も何度も自分を求めた彼女の姿。
なのに。
「あんっ、あう……っ、飛坂……気持ちいいっ……」
黙っていれば、保健室のベッドが軋む音が聞こえてきそうなほど辺りは静かで。
壁越しに聞こえてくる友美の喘ぎに、たまらなくドス黒い感情が湧き上がるのだった。
しかし、同時に湧き上がる別の感情。
脚の間が熱くなっていることに気付いた芦屋は、ふとそこへ目を移すと、ジャージがピンと張り出している。
そう、紛れもなく芦屋の身体は興奮していたのだ。
今まさに壁一枚隔てた所では友美は飛坂相手にあの細い腰を振っているに違いない。
「ああっ……飛坂……もっと、もっと奥まで突いてぇ……」
微かに聞こえる友美の声に耳を澄ます芦屋は、今すぐ友美の姿を見たいと思っていた。
自分じゃない、別の男に抱かれる友美を。
「ああんっ!! いいっ……! 気持ちいいのぉっ!!」
友美は絶頂に向かう時、声がさらに少し上がるのが特徴だ。
その声のトーンから、彼女はもうすぐイクのだと確信する。
そして、芦屋の頭の中は、自分じゃなく飛坂が友美を激しく犯している所を想像し、カサつく唇を舌舐めずりするのであった。