卑劣で最低な男-5
真希は真奈美の視線を切ると、真奈美の手を振り払って2階へと駆け上がっていった。
「ああ…真希…」
「さあて、どうするんだろうな?」
真希を見送った潤が真奈美に振り返って言った。
「潤くん、一体何を考えてるの?」
真奈美は心のモヤモヤぶちまけるように聞いた。
「勿論、真奈美さんと真希ちゃんを救うことだよ」
潤は気負いもなくアッケラカンと言った。
「どういう意味?」
「このままだと、真奈美さんは真希ちゃんに嫌われたままで、離婚されて家庭が崩壊するだろ。だからそれを阻止しようと思ってね」
「やっぱり…」
幾ら天然の真奈美でも、普段と違う潤の言動に薄々感づいていた。
「でも、それなら真希を犯すことないじゃない」
このまま自分の行いを認めた潤が、何もしないで退散してくれたら、ことが丸く収まると真奈美は身勝手ながらに思った。目の前で娘が犯されるのを喜ぶ親はいないから当然だ。
「甘いよ。それならリアリティーに欠けて、直ぐにバレるよ。やっぱり真希ちゃんとやらないとね」
潤はそう言ってウインクした。
「何よ。そんなに軽く言わないでよ。あっ!もしかして、真希とやりたいだけじゃないの?だったらお願いだからやめて。あの子には本当に好き合った人としてもらいたいの」
真奈美は潤の腕をぎゅっと握って頼んだ。
「じゃあいいじゃない。オレ、中1の頃から真希ちゃんのことが好きだったんだから資格あるでしょ」
潤はおどけて言ったが、真奈美は納得できなかった。
「真希の気持ちはどうなるの?」
「真希ちゃんも、オレのこと好きだよ。普段から、潤んだ目をしてオレをよく見てるし、決定的だったのは今日の参観。オレに手を振った真奈美さんにヤキモチを妬くのを見たら、いくら鈍いオレでもわかるよ。あの後の真希ちゃんは大変だったんだから」
「そ、そんなにわかりやすいの?」
言われてみれば、昔から真希はそんな傾向にあった。母親から見ても、とにかくストレートでわかりやすい娘だった。
「ははは、真奈美さんと一緒。凄くわかりやすい。で、どうなの?真希ちゃんがオレのことをどう思ってるか聞いたことない?」
「聞いてる…。潤くんが好きなんだって」
「じゃあ、問題なしね」
「でも、母親の前でするなんて、あり得ない…」
「今日しなくても、隠れてどこかでするよ。それなら目の前でする方が安心でしょ」