ぶち切れた娘-2
「ぐぅっ!」
蹴られた反動で、真奈美が尻餅をつき、奇しくも入浴後の湿り気を帯びた卑猥な淫部を、真希に向かって晒す結果になった。
「お、お前、何を見せてんだよ。そんな汚いモノを見せるな!」
過去、激しく怒ったことが無い者が、怒りのまま暴力を奮うと、興奮の余りにその行為はエスカレートする。真奈美にスマートフォンを投げ付けたことで、スイッチが入った真希は、もう止まらなかった。
真希は真奈美の髪を鷲掴みにすると、そのまま真奈美の頭をガクガクと揺さぶった。
「い、痛い!赦してー!」
激痛の余りに頭を抱えて赦しを乞う真奈美の顔を床に押し付けた。真奈美は激痛の走る頭を抱えて、赦しを乞いながらワアワアと号泣した。
「ちっ!子供かよ」
真希は舌打ちをして、掴んだ髪を離した。
「ハァ、ハァ、赦せるわけないだろ。ハァ、ハァ」
暴力を奮うには体力を使う。真希は長距離を走った後のように、肩で息をしながら、目の前で踞って号泣する真奈美を見下ろした。
髪を掴んでいた手が強張ったままだった。そのブルブル震える手に視線を向けた真希は、「うっ…」っと息を飲んだ。
指の間には、真奈美の抜けた髪が絡んでいた。真希はその量の多さにゾッとして、汚いモノを触った時のように、指に絡んだ髪を慌てて振り払った。
「汚いんだよ」
心の動揺を隠すように罵り、自分に動揺させたことへの矛先が、再び怒りとなって真奈美へと向った。足元で幼児のように小さく体を丸める情けない母親の姿と、耳につく号泣が真希の心を苛つかせた。
「うるさい!」
真希が怒鳴ったが、真奈美の号泣は止まなかった。
踞る真奈美の心は、後悔の念ではち切れそうになっていた。ネットの掲示板の誘いに参加した軽はずみな行為。犯される隙を見せていたこと。脅迫に屈した弱い心。家族に対する申し訳ない気持ち。そして一番の後悔は、弱い心の逃げ場として快楽に溺れ始めたことだった。
それらを含めて、今まで築き上げた【家族】が崩壊し始めたことを覚り、真奈美の心も崩壊寸前だった。その崩れそうな心が、自己の均衡を保たせようとして真奈美に号泣を続けさせていた。
しかし、反面、母親の身勝手なその号泣は、真希の心の均衡を崩す行為にもなっていた。号泣して心の均衡が必要なのは真希も同じだった。しかし、真希は号泣の手段を択ばなかった。
「黙れ黙れ黙れ!」
我慢できなくなった真希は、真奈美の耳を引っ張り、その耳元に向かって叫んだ。